QWSステージ#16 〜21の「問い」から生まれるムーブメントの兆し〜

QWSステージ

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3カ月間、問いと向き合い続けてきたプロジェクトメンバーたちの晴れ舞台、QWSステージ。今回は10月26日に開催されたQWSステージ#16の様子と、SHIBUYA QWS Innovation協議会(以下「SQI協議会」)による厳正な審査の結果、見事優秀賞・最優秀賞を受賞した4プロジェクトのSHIBUYA QWS(以下QWS)で見つけた価値や、次のQWSステージへ向けた意気込みをお届けします。

テキスト=小林諭佳・根岸薫海・植村麻理奈・ティンレイ 編集=守屋あゆ佳 写真=池原瑠花

ピッチ終了後、CROSSPARKで行なわれたネットワーキングの様子

QWSステージとは、3カ月に一度、QWSに集うプロジェクトメンバーがそれぞれの活動の中で見つけた「可能性の種」を放つ場です。QWSステージ当日はQWS内に舞台が設営され、発表するプロジェクトは、3分間で各々の活動成果についてピッチを行います。

QWSステージ#16では過去最多となる21プロジェクトが登壇し、各々の成果を発表しました。SQI協議会の審議のもと、全21プロジェクトの中から「ISSA KITCHEN TOKYO」がSQI協議会最優秀賞に選ばれました。また、SQI協議会優秀賞として「IKO」、「One by One Music」、「mairu」の3プロジェクトがそれぞれ受賞し、計4チームがQWSでの活動期間の延長の支援を受けることが決定いたしました。

キーノートトーク

QWSステージでは、各分野の第一線で活躍している方をゲストにお招きし、講演していただく「キーノートトーク」を実施しています。第16回のゲストは株式会社arca CEO / Creative Directorの辻 愛沙子さん。2020年に開催したQWS AWARDをはじめ、開業初期より、これまで様々なかたちでQWSに関わっていただいた辻さんに、今改めて自身の「問いとの向き合い方」をテーマにお話しいただきました。

 

――辻愛沙子さんのキーノートトーク

大きな「ソーシャルイシュー」も個人の「ライフイシュー」の集積に過ぎない

子供の頃は「なぜ空は青いんだろう」というように問いを立てることが好奇心のある良いこととされる一方で、大人が会社や学校で問いを立てると「それはそういうもんだから」と嗜められることがあります。しかし、多くの発明も社会変革も、そうやって嗜められながらも考えることをやめなかった誰かの問いから始まっているということは、歴史を見ても明らかです。「なぜそれはできないんだろうか」「なぜこうなっているんだろう」という問いこそが、社会を前に進めてきた。今日はそんな「問い」について皆さんと考えていきたいと思います。

 

今日私から皆さんにお伝えしたいのは、「ソーシャルイシュー(社会課題)」はあくまでも「ライフイシュー」の集積であるということ。データやファクトという視点から社会と向き合うと、どうしても主語が大きくなったり、数字でのみ課題を捉えてしまいがちです。それは社会を捉える大事な視点の一つですが、同時に重要なのは、寄りの目線で捉えること。なぜなら社会課題の根底には、一人ひとりのリアルな痛み・課題・不自由があるからです。私たちが社会課題に向き合うとき目にするその大きな数字の背景には、血の通ったひとりの人の痛みがあるということを忘れないことが大事だと思うんです。

倫理的であることは、素質ではなく「問いを立てる」意志を持ち続けること

私は普段、番組報道で発信することもあれば、裏方として、企画やクリエイティブの立場から社会課題に向き合うこともあります。そんな私の取り組みに対して「倫理的」であったり「優しさ」があると評価していただくことがあります。ありがたいことではあるのですが、私は社会課題に対して向き合う、すなわち「問いを立てる」ことは、必ずしも倫理的であることや、優しさというだけではないと思っています。社会課題に向き合うことは、もともと持っている性格や素質ではなく、そうあろうとする「意志」だからです。

 

完璧な人も、会社も、社会も存在しえないからこそ、倫理的であろうとする意志があるのか、変わろうとする意志があるのか、それが大事だと思います。これは企業であってもクリエイターであっても、変わらないはず。私自身もこの意志を持ち続けて、4年目のQWSとともに、社会が抱える様々な課題に対して、これからも問いを考え続けていきたいと思っています。

 

登壇者略歴(辻愛沙子氏)

株式会社arca CEO / Creative Director

社会派クリエイティブを掲げ、「思想と社会性のある事業作り」と「世界観に拘る作品作り」の二つを軸として広告から商品プロデュースまで領域を問わず手がける越境クリエイター。
リアルイベント、商品企画、ブランドプロデュースまで、幅広いジャンルでクリエイティブディレクションを手がける。2019年春、女性のエンパワメントやヘルスケアをテーマとした「Ladyknows」プロジェクトを発足。
2019年秋より報道番組 news zero にて水曜パートナーとしてレギュラー出演し、作り手と発信者の両軸で社会課題へのアプローチに挑戦している。

受賞者インタビュー

誰もが食体験を楽しめる世界を実現したい

プロジェクト名:ISSA KITCHEN TOKYO 加納 颯人さん

重度のアレルギー患者である弟を持つ創業者が、目の前にあるアレルギー問題を解決したいという思いから立ち上げた「ISSA KITCHEN TOKYO」。食物アレルギー関連の商品の開発や販売を行い、食物アレルギーがある人もない人も誰もが食を共有し、楽しむことができる世界を目指し、活動しています。

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一緒に手を携えることが、課題解決の近道

プロジェクト自体はQWSに入る前から動いていて、第一弾の商品開発が終わったタイミングで、QWSチャレンジとしての活動がスタートしました。1ヶ月目は期間限定で「ISSA  KITCHEN TOKYO」として初めて直営リアル店舗を出店し、全商品の完売を達成。出店してわかったことは、食物アレルギーの方が想像以上に多くいるということ。また、ビーガンやグルテンフリーに興味のある方にも「こんなお菓子があって嬉しい」「アレルギー対応とわからないくらい美味しい」と声をかけてもらい、病気や信条に関わらず、誰もが食を楽しむことができるというコンセプトを喜んでくれるお客様がいることを確信しました。

 

QWSチャレンジ中盤以降は、ヒアリングの実施や親和性のありそうな企業を紹介してもらい、企業へのニーズの可能性も見出すことができました。また、QWSで活動するプロジェクトメンバーの方からアドバイスをもらうこともできて、プロジェクトにとって価値のある出会いがいくつもありました。似た分野で先を走っている先輩にすぐに悩みを話せる環境が、QWSの良さの一つだと思っています。

 

今回の賞はQWSで関わってくださった皆さんに支えられて受賞することができました。QWSにいる皆さんと手を取り合うことで、食の壁や制限を抱えている人の課題を解決していくことができると信じて、これからもプロジェクトを進めていきたいと思っています。

まずは先生が外へ、そして子供たち自らが人生設計を形にする授業を目指して

プロジェクト名:

IKO「板橋第十小学校の研究を面白くする会」 
小泉志信さん

板橋区立板橋第十小学校の教員のみで構成され、校務のお仕事とは別に小学校をより面白くするために作られたプロジェクトです。先生たちが「探究学習」に取り組んでいくにあたって、一年間で子供たちが多様な1000人の大人たちと出会い、さまざまな選択肢を知った上で自分なりの人生設計をつくることを目的としています。

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QWSで出会えた世界線と、広がる子供たちの可能性

QWSチャレンジの3ヶ月間で一番印象的だったことは職員会議をQWSで行ったことと、多種多様な仕事をしている人たちと共に、未来の授業をつくるワークショップを開催できたことです。QWSという場所だったからこそ、先生たちが「授業の幅」「世界線の広がり」「多様な生き方があること」を身をもって感じられたことは、とても大きな価値だったと思います。また職員室では生まれない繋がりもできて、結果として、QWSで出会えたプロジェクトや企業の皆さんを学校に招いた授業を作れたことは、教育界にとっても意義深いものになりました。

 

QWSは私たちにとって、日常を過ごしていく中で出会えない人たちと出会える場所、そして何かあったら力を貸してもらえる人たちがいる場所。特に、同世代や若い世代からの刺激は大きいです。普段、学校で教えている子供たちに近い世代が、未来をカタチにしようとする姿にはとても勇気をもらえます。

 

今は複数の企業に協力してもらいながら、子供たちが自分の将来を考えるきっかけを作っている段階です。次の3ヶ月では子供たちのスポンサーを見つけ、子供たちが1000人と出会った先に作った人生設計を大人から真剣にフィードバックを受け、一人ひとりの人生の広がりを感じられる授業を作ります。

人間が生み出したペットのストレス問題を、音楽の力で解決したい

プロジェクト名:
One by One Music 畠山 祥さん

人間と動物が一緒に住むことが当たり前になった今、お留守番で一人ぼっちになったペットが分離不安症という精神病を患ってしまうという課題が生まれています。One by One Musicは世界初の実験結果を用いて、自動で作曲するプログラムによって、人間も動物も飽きさせない音楽を制作し、サブスクリプションモデルによって動物のためのリラックス音楽を提供します。

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一度で終わらせないコモンズとのつながりが、プロジェクトを前進させてくれた

QWSチャレンジに応募したのは今回で二度目。QWSチャレンジ10期生の活動で出てきた反省を活かしたいという思いから、応募しました。

QWSの一番の魅力は、社会的信用度の高いQWSコモンズとメンタリングセッションができる「スクランブルミーティング」です。参加する前には、メンターのプロフィールを拝見して、専門分野に合わせた質問を選ぶようにしています。地道な下調べもプロジェクトにとって、有益な時間になると思っているからです。僕自身、そんなに能力が高いとは思っていません。だからこそ、愚直に調べる努力が必要だと思っています。

 

QWSチャレンジの活動期間中に、プロジェクトに大きく影響があったことが二つあります。一つ目は自分で事業を走らせたことのある方からアドバイスをもらい、プロジェクトに必要なことが明確になったこと。自分ひとりでは抱えきれないとわかり、仲間が増えるきっかけになりました。二つ目は、複数人のQWSコモンズの方に広報の協力をしていただいたこと。前回の反省を活かして、スクランブルミーティングの時間だけで終わらせず、個別でミーティングを入れてもらうことを意識していました。

 

QWSコモンズだけでなく、走り出しのプロジェクトも多く集まるQWSには、雑草魂が残っていると思います。QWSは僕にとって「自分を律する場所」です。今後はよりプロトタイプを洗練させて、動きを広げていく活動を続けていきます。

青い救急車が、あなたの街を当たり前に走る未来を目指して

プロジェクト名:

mairu 田上 愛さん

「移動はその場所でしか得られない経験を届け、人生を豊かにするもの」と信じる mairuは、身体的障がいがある人たちのために医療・福祉搬送サービスの検索・予約支援サービス「mairu」と、医療・福祉搬送サービス「mairu+」の二つを開発し、現在神戸市を中心に実証実験を進めています。

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前回のQWSステージの受賞記事はこちら

机上の空論ではなく、世の中に届けられるサービスをつくる

前回のQWSステージ#15で最優秀賞を受賞してからの3ヶ月では、大規模な実証実験がスタートし、仲間も増えました。私たちは大学2年生ですが、遊園地に行くのと同じくらいmairuを考える時間が大好きなんです。そのエネルギーがあったからこそ、スピード感を持って進めることができたと思います。難しい状況と向き合わなければいけないこともありますが、アイデアを考えたからには自分たちで終わらせるのではなく、世の中に形にしてしっかり届けていきたい、という強い思いがあります。

 

QWSに入って9ヶ月が経ちましたが、 QWSってどんな場所よりも居心地がいいんです。それは、私たちが頑張っている姿に気づいてくれる存在がいるから。入った当初は誰も知らない状態でしたが、用事がなくても、作業しながら誰かと会って話すためにQWSを利用するようにしたら、繋がりが次から次へと生まれていきました。

 

実際にmairuを使ってもらう機会も増えて、いよいよ社会実装フェーズに。また、救急車を購入して、車両を走行させる話も現実的になってきました。当たり前のように「mairu」 という医療・福祉搬送サービスをより多くの人に提供できる社会の実現を目指して、チーム一丸となって頑張っていきます。

「QWSステージ#16」
キーノートと21プロジェクトのピッチ映像はこちら

「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を募集しています

2023年11月から活動を開始したQWSチャレンジ第17期のメンバーは、年齢も領域も様々。新しい仲間、新しい自分、新しい世界。どんな出会いが待っているのでしょう。それぞれのプロジェクトの問いは、どのように磨かれ、放たれていくのでしょうか。次回のQWSステージ#17は、2024年1月末に行われます。QWSから生まれる「可能性の種」をお楽しみに。

現在、QWSチャレンジ第18期を募集しています。詳しくはこちらをご覧ください。

QWSチャレンジ第18期を募集中

QWSステージ#16登壇プロジェクト一覧

1. One by One Music|動物が音楽を聞く世界は訪れるだろうか?

2. millenium|大学生が「自分がやりたいこと」を見つけられないのはなぜ? 日本の大学生たちへ「新しい社会への入り口」を創出できないか?

3. 岡谷シルクのクラフトビール『CHILLK(チルク)』| 「岡谷シルク」という伝統文化を、若者層がもっとカジュアルに体感できないか?

4. 誰もが食体験を楽しめる世界を実現する、お菓子ブランド「ISSA KITCHEN TOKYO」| バリアフリーな食はどこまで食の壁を打ち壊せるのか?

5. Near Earth Project|アバターロボットで世界中の人や場所とつながることができたら?

6. コミュニティフードデリバリー『ぼくデリ』|孤食を減らし、団欒を増やすには

7. 話し方研究室|話し方が変わると自分が変わり、未来を変えられるのか?

8. CACTUS TOKYO|世界中の誰もが、自然を豊かにできるブランド体験とは?

9. Art Meet|アート作品を実際に観た体験価値を他人と共有するにはどうしたら良いだろうか?

10. Wake Up Pointe Shoes|踊りと環境の連関とは?〜バレエが描くサステイナブルな社会の実現〜

11. ステハンステフリ|心の余裕ゼロの高校生が息抜きと新しい経験の獲得を両立させることはできるのか?

12. IKO「板橋第十小学校の研究を面白くする会」|公立小学校で1000人の大人と出会うと子どもはどんなキャリアを描くのか?

13. Sake3| 世界中の人が参加できる日本酒造りのプラットフォームは実現可能か?

14. 0蔵庫|フードロスと男女格差。この二つを解決するカギは冷蔵庫に?

15. つながるオンライン人物名鑑|個人が組織や地域を越えて活躍できる社会をつくるには?

16. LAST WORDS|あなたが死ぬ前に残したい言葉はなんですか?

17. mairu|誰もが行きたい場所へ移動できたら、どんな世界になる?

18. Larva06|次世代研究者が作るメディアの力でアカデミアを変えることは可能か?

19. PJ_how to work with well-being?|これからの、それぞれのはたらきかたの豊かさとは?

20.SAFEID|知的障害者のファッションセンスを磨いたら、生活の選択肢は増えるのか

21. 共創プラットフォーム「BAKUTAN」| 既存の社会構造が敷いたレールから学生を解き放てるか?

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