踊りと環境の連関とは?〜バレエが描くサステイナブルな社会の実現〜

プロジェクト名 Wake Up Pointe Shoes!
#バレエ#環境芸術#舞台芸術#身体表現#踊り#環境問題#自然
「バレエを通して社会を見つめる」。プロバレエダンサーが相棒として使うトゥシューズの大量廃棄に目をつけたことで始まったWake Up Pointe Shoesは、バレエ社会が一般から隔離され賃金・労働環境含めサステナブルでない現状に問題意識を持っている。このQWSチャレンジにおいては、バレエを人生の軸とする子供やダンサーと共に、バレエを通した社会に与えるインパクトの創造に挑戦したい。

何にチャレンジするのか?

プロのダンサー・学問的専門家・学生が連携した「環境アート」作品の創造。

(環境アートとは、人間と自然の共生を自覚することを目的に、様々な芸術を用いて「自然」を表現する作品のことである。)

Note:https://note.com/wakeuppointeshoe/
Instagram:https://www.instagram.com/wakeuppointeshoes/

なぜチャレンジするのか?

バレエは自然と密接に関わっている。動きが動植物からインスピレーションを受けていたり、「白鳥」や「森の妖精」など古典作品の題材は、自然環境にまつわるものが多くある。さらに、バレエには、見ている人の感情を動かす力がある。だからこそ、「バレエ」作品を用いることで、より多くの人が「自然」を身近に感じ、自然と共生する社会を目指せると考える。

これに加え、私たちはバレエ界に対するチャレンジ目標もある。それが「バレエを通して社会を見つめる」ことだ。プロバレエダンサーが相棒として使うトゥシューズの大量廃棄に目をつけたことで始まったWake Up Pointe Shoesは、バレエ社会が一般から隔離され賃金・労働環境含めサステナブルでない現状に問題意識を持っている。このQWSチャレンジにおいては、バレエを人生の軸とする子供やダンサーと共に、バレエを通した社会に与えるインパクトの創造に挑戦したい。

どのようにチャレンジするのか?

・プロのダンサーとの環境アート作品の制作
・踊りが好きな小中学生を対象にした、「環境アートWS」の開催

プロジェクトメンバー

鈴木歌恋

企画統括

鈴木歌恋

企画統括

慶應義塾大学総合政策学部在学。
渋谷QWSチャレンジ14期(LAPPY〜磨く感性、光る個性〜)に参加。
0歳7ヶ月よりバレエを始め、現在まで年齢と同じ年数間続けている。大学では法学、社会学を学びながら、小劇団やアーティスト、企業へのインタビュー活動を行なっている。鈴木寛研究会,小熊英二研究会、横田浩一ゼミ所属。

望月碧

広報

望月碧

広報

国際基督教大学教養学部2年生。たまたま通りかかったバレエ団付属スタジオで小学1年よりバレエをはじめ、移籍を経て現在も学業との兼ね合いを見つけながら続ける。山が好きが転じて環境問題に興味を持ち、高校3年次より青年環境NGO Climate Youth Japanに所属。2022年10月より広報事業部統括、COP27に派遣。

大泉萌香

人事

大泉萌香

人事

慶應義塾大学総合政策学部に在学。 0歳11ヶ月よりバレエ学校に所属し現在に至るまでの約19年間継続している。 高校3年生でバレエを客観的な目線で見ることの面白さに気づき、バレエをはじめとする文化芸術と社会の関係性について研究しており、大学では法学やマーケティング、文化政策などを学んでいる。

大沢香晴

演出アドバイザー

大沢香晴

演出アドバイザー

秋田県大館市出身、バレエダンサーを目指すも鬱状態になり、社会人を経て大学に入学する。「生きる意味を代弁できる作品づくり」を目指し、現在は演劇の脚本演出として活動する他、教育への応用研究もしている。

山本萌葉

WS企画統括

山本萌葉

WS企画統括

慶應義塾大学総合政策学部2年。小学校1年生の頃からバレエを始め、現在も学業と両立させながら続けている。また現在は大和シティー・バレエの政策にも携わっている。大学では労働政策、マーケティング、デザインを学んでいる。

紫安絵理

紫安絵理

日本の大学で半年在学し、現在はアメリカの大学で学んでいる。専攻は心理学、経済、仏語を検討中。言語と心理の関係に興味がある。11年間のクラシックバレエ経験者であり、社会(経済、環境)とバレエの関係に興味を持ちwake up pointe shoesに参画した。趣味はバレエ鑑賞、ヨガ、水泳。

応援コメント

廃棄されたポワントは努力と、そして競争と不安の象徴に感じます。
バレエを含む芸術は、本来であれば人と社会を豊かにするもののはず。
日本社会はそれを拒絶しているように見えます。
本プロジェクトで、ポワントを通じて本当に豊かな社会は何なのか、
明らかにしていってほしいと思います。
慶應義塾大学理工学部機械工学科 教授三木則尚

リーダーインタビュー

あなたの[問い]は、どのような未知の価値に繋がると考えますか?

私たちのプロジェクトには、「日本におけるバレエ界の理想像」がある。
それは、「日本のバレエダンサーがバレエ団の給料で、生計を立てられる。」社会の実現である。普通のビジネスマンが、会社に行って働けばしっかりお金を稼げるように、ダンサーもバレエ団で踊れば相応の報酬をもらえるようにしたい。では、なぜこんなにも単純なことが今、バレエ界では実現できていないのか?
そもそも、ダンサーの低賃金の問題の背景には、バレエ団の経営難がある。ほとんどが一般社団法人であるバレエ団の収入源とは主に、寄付金と公演収入から成る。すなわち、バレエ団の経済力を高めるには、この二つの量を増やすことが不可欠だ。しかし、それが大変難しい。なぜなら、一般的に、日本では西洋文化で公演のチケットも高いバレエは、何か相当のきっかけがないかぎり触れる機会が全くなく、バレエに対する関心は低いからだ。近年、その裾野を広げるために「エンタメ分野」では少しずつ活動が始まった。例えば、バレリーナ芸人やバレリーナカップルYouTuber、モデルなどだ。しかし、現実を見ていると、こうしたエンタメで獲得した客層は、「エンタメとしてのバレエ」に関心を持ったにすぎず、実際バレエ公演に足を運ぶという行動につながるケースは少ない。
そこで私たちは、この根本的な原因は「バレエと社会の距離があまりにも遠い」ことにあると仮説を立てている。習い事としてのバレエやエンタメとしてのバレエは注目を浴びる中で、「バレエ団」はやはり未だ社会と隔たりがある。そして、その隔たりの要因は、バレエ団を構成する人員にあると考えている。これまで、バレエを社会に発信するのは、すべてバレエ界側の人間であった。しかし、そのダンサーたちは、幼少期からバレエ一筋で努力を重ね、学校を中退して海外留学に行くが多くいる。そんな中で、実際私たちはダンサーが「私は勉強できないからダンサーになるしかなかった」とインタビューに答える声を聞いた。このように、そもそも「社会」の流れから隔離されたバレエ界では、いくらSNSやエンタメ化を通してプロデュースしたとしても、社会との距離感は遠いままなのではないか。
だからこそ、私たちの団体は大きな使命感に燃えている。バレエは大好き、だがダンサーではなく、大学で勉強をしている、そんな学生の身分だからこそ、私たちが「バレエと社会の架け橋」になれると考えている。
そこで、これまで私たちは「環境」「健康」「哲学」「政治」「キャリア」など、あらゆる社会の領域においてのバレエの位置付けを模索してきた。それが上記の活動実績である。その活動の中で、私たちは、自分自身も含め、バレエ界の側に人々の社会に対する知見を深めることを行ってきた。

あなたの「問いの感性」は、どのような経験を通じて育まれましたか?

▶︎バレエ
Wake Up Pointe Shoesはバレエを長年習い続けてきた、バレエが「好き」という共通点かつ前提を持つメンバーで構成されている。私たちの活動の原点は、ある梅雨の日、部屋に大切に飾っていた履き潰したトウシューズに一気にカビが生え、捨てざるを得なくなった時、2Lゴミ袋3つ分のトウシューズの山をみたことにある。これまで当たり前のように2週間で履き潰してきたトゥシューズは、視点を変えれば「大量廃棄」に置き換えられることに気付いたのだ。これをきっかけに活動を進める中で、バレエ界には多くの課題が山積しているが、それらはすべて「当たり前」として見過ごされていることに気づいた。そして、バレエダンサーの労働環境や社会保障、ひいては人生が如何に持続可能性を欠いているのかに問題意識を持つようになり、同じくバレエ愛を持つ学生として何かアクションを起こしたいと思うようになった。

▶︎自然
今回のQWSチャレンジで「環境アート」として環境問題を題材にした作品の創作に取り組もうと思ったきっかけは、メンバーのひとりが高山をはじめとする大自然に強い関心を寄せていたことにある。環境とは、自己と周辺との境目のことを指し、自然のみならず、生活環境、労働環境や自然環境などを含む。その中でも近年問題とされているのは「地球環境」問題である。UNEP(国連環境計画)はこれを、気候変動、生物多様性、汚染の3つの分類に大きく分け、それぞれが人為的要因により発生し、深刻化しているとする。近年特に気候変動問題はメディアでも大きく取り上げられるようになり、人類が立ち向かわねばならない巨大なリスクとして認知されるようになった。しかし、この問題の仕組みをすべての人が真に理解しているとはいえないだろう。地球環境は、それぞれが役割を持つ数多の生物種が絡まりあって構成しており、複雑で分かりづらいからだ。ここで、私たちはバレエという、言語ではなく身体表現に主題を伝える芸術を活かそうと考えた。バレエの作品には言葉がなく、ボディーランゲージですべての会話が行われ、物語が進む。地球環境の住人である植物、動物、微生物などは人間の言葉を使わない。だからこそ、彼らの代弁者となれるのが身体表現なのだ。また、都会に暮らしパソコンと向き合うだけでは地球環境が如何に変化したかに気付くことはできても、体感することはできない。実際に自分の身体と経験を通してこそ、本質は分かりうるのではないだろうか。この「環境アート」の創造は、ダンサーと観客の両方にとってより身近に環境問題を理解するチャンスとなりうるのだ。

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