QWSステージ#15 〜磨かれた問いの集積地、18の可能性の種〜

QWSステージ

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3カ月間、問いと向き合い続けてきたプロジェクトメンバーたちの晴れ舞台、QWSステージ。今回は7月27日に開催されたQWSステージ#15の様子と、SHIBUYA QWS Innovation協議会(以下「SQI協議会」)による厳正な審査の結果、見事優秀賞・最優秀賞を受賞した4プロジェクトのSHIBUYA QWS(以下QWS)で見つけた価値や、次のQWSステージへ向けた意気込みをお届けします。

テキスト=小林諭佳・髙木香純・根岸薫海・小山田佳代 編集=守屋あゆ佳 写真=池原瑠花

3分ピッチを披露する「つながるオンライン人物名鑑」の垣畑さん 

QWSステージとは、3カ月に一度、QWSに集うプロジェクトメンバーがそれぞれの活動の中で見つけた「可能性の種」を放つ場です。QWSステージ当日はQWS内に舞台が設営され、発表するプロジェクトは、3分間で各々の活動成果についてピッチを行います。

QWSステージ#15では過去最多となる18プロジェクトが登壇し、各々の成果を発表しました。SQI協議会の審議のもと、全18プロジェクトの中から「mairu」がSQI協議会最優秀賞に選ばれました。また、SQI協議会優秀賞として「We’ll(ウェル)~女の子の体に寄り添って、自由で輝けるライフプランを~」(企業賞である味の素賞とのダブル受賞)、「sake3」、「コミュニティフードデリバリー『ぼくデリ』」の3プロジェクトがそれぞれ受賞し、計4チームがQWSでの活動期間の延長の支援を受けることが決定いたしました。なお。今回より新設された企業賞、セブン-イレブン・ジャパン賞は「Rhythmy」が受賞しました。

今回より審査時間にはプロジェクトと来場者のネットワーキングが行われました

キーノートトーク

QWSステージでは、各分野の第一線で活躍している方をゲストにお招きし、講演していただく「キーノートトーク」を実施しています。第15回のゲストはDeportare Partners代表の為末大さん。

スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者であり、男子400メートルハードルの日本記録保持者。現在は執筆活動、身体に関わるプロジェクトを行う為末さんに「問いの持つ効果」についてお話しいただきました。

――為末大さんのキーノートトーク

ゲームとプレイの間で揺らぐ社会

社会は常にルールや秩序のある「ゲーム」という側面と、ゲームを逸脱したルールのない「プレイ」の側面の間で揺らいでいるのではないでしょうか。私はゲームの世界は「意識的に考える世界」とも捉えています。しっかりと統率され、常にルールを逸脱しないように意識しているゲームの世界。

ところで、私たちが「意識」できる情報量とはどのくらいでしょうか。空気に触れたり、目で見たり、耳で聞いたり……外から身体に取り込んでいる情報をビット数で計算すると、毎秒数百万ビットあると言われています。その中でちゃんと「意識できる」情報量は毎秒50ビットに過ぎません。つまり私たちの活動のほとんどは「無意識」なんです。

「無意識」を育てる

「問い」とは何かーーそれは世の中の人に注意を向けてもらう行為ではないでしょうか。無数の無意識情報の中から、ある一点に意識を集中させる行為に近いかもしれません。

では、問いや着想の出発点とはどこか。着想の根幹である「ひらめき」や「勘」というのは、これまでの人生で自分の身体を通じて体験してきた情報の集積によってコントロールされていると思います。

感じ取る無意識の世界が多様であればあるほど、「勘」は鋭く「ひらめき」は独特になると思います。QWSのように多様な年齢、職業、考えをもつ人が集う場所で、様々なバックグラウンドの人たちと交わりながら「無意識」を育てることで、一人ひとりの「ひらめき」や「問い」が生まれる。それらが相互に創発しながらイノベーションが生まれることで、社会は活発に動いているともいえそうです。

登壇者略歴(為末大 氏)

Deportare Partners代表

1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2023年8月現在)。
現在は執筆活動、身体に関わるプロジェクトを行う。主な著作に『Winning Alone』『走る哲学』『諦める力』など。
45歳を迎えた今年、アスリートとしての学びをまとめた『熟達論:人はいつまでも学び、成長できる』を刊行。

受賞者インタビュー

移動の機会を全ての人へ

プロジェクト名:
mairu 〜予約したい福祉タクシー・民間救急がすぐに見つかるシステム〜

大村慧さん、柴田紗季さん、田上愛さん

身体的ハンディキャップを抱え、自力での移動が難しい方の移動を支えている「福祉タクシー」や「民間救急」。しかし、検索と予約の手間が利用者にとって大きな負担になっているのが実情です。mairuは、福祉タクシーを起点として移動を全ての人にとって開かれたものに変え、「望む場所に誰もがたどり着ける社会」の実現を目指します。

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前回のQWSステージの受賞記事はこちら

たどり着いた新たなサービスの価値

今回のステージでは、目標である最優秀賞を受賞することができました。振り返ってみると、一般財団法人 トヨタ・モビリティ基金が主催するアイデアコンテスト「Mobility for ALL 2023」への採択や、法人化の完了、実証用システムの開発完了、Urban Innovation KOBEへの採択など、私たちを取り巻く環境が大きく変わった3カ月だったと思います。

「福祉タクシー」と「民間救急」は自力での移動が困難な方や医療行為が必要な方に向けたサービスです。しかし事前予約が必要であること、認知度が低いことからなかなか普及していないのが現状です。またQWSで繋がった自治体からのヒアリングや視察から、搬送件数の約半分が救急車でなくてもよかったという話を伺いました。私たちはこのような軽傷事例の搬送を「民間救急」が担えるのではないかと考えています。今回のピッチでは、従来のwebサービスにとどまらない私たちの可能性についてお伝えすることもできました。

次のQWSステージでは、モビリティリゾートもてぎや神戸市での実証実験を踏まえ、私たちの活動をお伝えしたいです。チャンスが多いからこそ、やりたいこともやるべきことも増えているのがチームとしての目下の課題ですが、体制を整えながら、次に向けた準備をしていきます!

女性が健康に、自分らしく生きていくための架け橋になりたい

プロジェクト名:

We’ll(ウェル)~女の子の体に寄り添って、自由で輝けるライフプランを~ 
田中 沙季さん

情報がありふれた世の中ではフェムテックは意識の高いものとして、他人事として捉えられています。We’llは女性が自分自身の健康状態と向き合い、自分らしく生きることができるよう、女性の体の不調をもっと身近に感じてもらうために活動しています。

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QWSで得た新たな気づきは、女性の不調は性別問わず関心があるということ

QWSチャレンジの3ヶ月間で一番印象的だったのは、採択していただいたコモンズの方とイベントを一緒に開催したことです。私たちの課題意識を共有できた実りあるイベントになりましたし、イベントを運営する際のナレッジも学ぶことができました。また参加者の中に男性がいたことで、男性にも声に出しづらい状況があることに気づかされました。もし男性が声を掛けられるようになったら、女性も変わることができるかもしれないという、新たな可能性を見出せたイベントになりました。

QWSにはプロジェクトの成長を支えてくれる存在がたくさんいます。採択していただいたコモンズの方やコミュニケーター、そしてチャレンジ同期です。スタートが一緒だからこそ同じ悩みを抱えていることも多く、普段から互いによく相談をしていました。授賞式で名前を呼んでもらったときは、今までQWSでお世話になった人たちの顔が走馬灯のように頭によぎって、感謝の気持ちでいっぱいになりました。みなさんの力があってこそ達成することができた受賞だと思っています。

日本酒に関わる全ての人が幸せになることを目指して

プロジェクト名:
sake3 須田 隆太朗さん

世界中に愛されている日本酒ですが、酒蔵では地域の外に出て日本酒づくりをすることが難しいという課題を持っています。そこで日本酒タンクの共同所有プラットフォームを通じて、日本酒好きの人が、ただ日本酒を消費するだけでなく、積極的に参加して日本酒の価値を高めることができる世界を実現するため活動しています。

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前回のQWSステージの受賞記事はこちら

世界で挑戦するために、世界中の価値観を取り入れる

前回のステージで最優秀賞をいただいてからQWSでの経験を糧に外に出てみるチャレンジをしてきました。結果、プロジェクトが大きく前進する気づきを得ることができました。

まず、QWS CROSSTAGE出会った酒蔵にお話を聞きに、福井市の永平寺町に行きました。初対面にも関わらず、取締役からは蔵の歴史や経営方針、マーケティングについて、杜氏からは日本酒造りに込める熱い想いと技術を何時間にも渡ってお聞かせくださいました。

また、デンマーク・コペンハーゲンで開催されたスタートアップコンテストに日本代表として参加したことも印象的。日本酒の持つポテンシャルを感じた反面、海外で評価される対象になるために、魅力的なビジネスを作ることの必要性と難しさを実感しました。物流を整えることはもちろんですが、ヨーロッパの人たちの価値観を知った上でものづくりをしていく必要があると気づかされました。

伝統ある酒蔵にとっての今までのやり方を変えることは、とても難しい決断です。アイデアも人も揃った今、一緒に手を取り合ってもらいやすくするために、どうやって日本酒を多くの人に届けることができるか、これからも問い続けていきたいです。

「食」をきっかけに孤独を減らし、団欒を増やす

プロジェクト名:

コミュニティフードデリバリー『ぼくデリ』 安川 尚宏さん

現代の日本社会は「ネット社会化」「リモートワーク化」「少子高齢化」「核家族化・単身世帯化」「地域コミュニティの弱体化」「住環境の孤立化」などあらゆる状況の中で孤独を感じやすい社会となっています。コミュニティフードデリバリー『ぼくデリ』は、食を通じて誰もが気軽に参加できるコミュニティを形成し、孤独社会の解消を目指して活動しています。

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「食」は人を繋げる。何度でも会える関係をつくりたい

QWSチャレンジの3カ月間はQWSでランチ会を開催して、仲間を集めるところからスタート。我々が主催するだけではなく、QWSで活動する他のプロジェクトとも共同でランチ会を開催しました。参加した方から「ぼくデリ会は食がきっかけだからこそ、“何回でも会える”のがいいところ」というコメントをいただき、その場限りや一回きりの関係じゃなくて、何度も会えるからこそ、友達や名前を呼び合える関係をつくれることが『ぼくデリ』の魅力の一つだと気づくことができました。実はメンバーもみんな「ご飯」と「お酒」と「出会い」が好きで、ぼくデリが主催するご飯会がきっかけで出会った仲間たちなんです。こうした経験からも、食には人を繋げる力があると確信しています。

今回QWSステージに立つにあたって、改めて自分たちがやっていることが、“日本社会が解決したいこと”であり、“QWSのコミュニティにも求められていること”だと実感できました。次の3カ月では様々な企業や自治体とコラボレートして、『ぼくデリ』を外の世界へどんどん広げていきたいと思っています。

「QWSステージ#15」
キーノートと18プロジェクトのピッチ映像はこちら

「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を募集しています

2023年8月から活動を開始したQWSチャレンジ第16期のメンバーは、年齢も領域も様々。新しい仲間、新しい自分、新しい世界。どんな出会いが待っているのでしょう。それぞれのプロジェクトの問いは、どのように磨かれ、放たれていくのでしょうか。次回のQWSステージ#16は、2023年10月末に行われます。QWSから生まれる「可能性の種」をお楽しみに。

現在、QWSチャレンジ第17期を募集しています。詳しくはこちらをご覧ください。

QWSチャレンジ第17期を募集中

QWSステージ#15登壇プロジェクト一覧

1. Rendery|AIは建築家を助けることができるのか

2. ゲストハウス向けapp開発|地域・学生・エンジニアはどのように繋がれるのか

3. StellabO|その子にあった安心できる場とは

4. コミュニティフードデリバリー『ぼくデリ』|食を通じて人と人と人を繋げられるか? 食を通じて孤独社会を癒せるか?

5. つながるオンライン人物名鑑|他己紹介は社会における人的資本の最適配分に寄与するか?

6. みんなの冒険教室|「体験型授業」で子どもたちの世界がどう広がるのか?

7. sake3|世界中の人が参加できる日本酒造りのプラットフォームは実現可能か?

8. We’ll(ウェル)~女の子の体に寄り添って、自由で輝けるライフプランを~|女の子が体の不調に気が付けたら、彼女たちは輝ける未来を描けるのか

9. Astral Project|人は視点を拡張できるのか?

10. support share|肢体不自由者も健常者も気兼ねなく助けの声を掛け合える社会にするために一般の人が身体介助を含めたサポートや人助けするときのハードルを低くするには

11. ALICE|子どもが興味のタネを見つけ、明日を夢見るセカイは作れるか?

12. Play Shibuya|JKが『ファッション』を学んだら社会はどう変わるのか?

13. n拠点|拠点があることによって生まれる価値とは?

14. 失敗談買取サービス「mess up」|「失敗」をもっと「おいしく」すると、社会はどうプラスに変化できるのか?

15. ALLHOME|社会で子どもを育てる仕組みをデザインするには

16. Rhythmy|生命のすこやかなリズムと、ナイトワークは両立できるのか? ー時間生物学と睡眠ー

17. KWANON LAB|潜在意識 × アート✨みんなで未来を旅したらどうなるん?

18. mairu|「Webサービス」はどこまで人の「移動」を解き放てるか?

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