QWSステージ#18〜問い続ける姿勢が切り拓く「可能性の種」〜

QWSステージ

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3カ月間、問いと向き合い続けてきたプロジェクトメンバーたちの晴れ舞台、QWSステージ。今回は4月25日に開催されたQWSステージ#18の様子と、SHIBUYA QWS Innovation協議会(以下「SQI協議会」)による厳正な審査の結果、見事優秀賞・最優秀賞を受賞した4プロジェクトのSHIBUYA QWS(以下QWS)で見つけた価値や、次のQWSステージへ向けた意気込みをお届けします。

テキスト=髙木香純・邑田龍成・植村麻理奈 編集=守屋あゆ佳 写真=池原瑠花

QWSステージ#18に登壇したプロジェクトメンバーたち

QWSステージとは、3カ月に一度、QWSに集うプロジェクトメンバーがそれぞれの活動の中で見つけた「可能性の種」を放つ場です。QWSステージ当日はQWS内に舞台が設営され、発表するプロジェクトは、3分間で各々の活動成果についてピッチを行います。

QWSステージ#18では17プロジェクトが登壇し、各々の成果を発表しました。SQI協議会の審議のもと、全17プロジェクトの中から「One by One Music」がSQI協議会最優秀賞に選ばれました。また、SQI協議会優秀賞として「Child Play Lab.」、「Soullume Project」、「Aetamelon」の3プロジェクトがそれぞれ受賞し、計4チームがQWSでの活動期間の延長の支援を受けることが決定いたしました。

キーノートトーク

QWSステージでは、各分野の第一線で活躍している方をゲストにお招きし、講演していただく「キーノートトーク」を実施しています。第18回のゲストは一般社団法人スタートアップエコシステム協会 代表理事/Plug and Play Japan株式会社 Executive Directorを務める藤本あゆみさん。一般社団法人スタートアップエコシステム協会を立ち上げるなど、スタートアップ支援のために幅広く活躍されている藤本さんに「未来をつくるための問いへの向き合い方」をテーマにお話しいただきました。

 

――藤本あゆみさんのキーノートトーク

スタートアップは自ら選択肢を新しくつくることができる

世界経済フォーラム(WEF)でこんな言葉が言われました。「新しい世界では、大きい魚が小さい魚を食べるのではなく、速い魚が遅い魚を食べる」ーー。不確実性が高い現代社会においては、規模よりもスピードが重要だということです。私もスタートアップ業界に身を置いていますが、今、スタートアップにはすごくチャンスがあると感じています。

スタートアップは”選択肢”をつくることができます。”選択肢をつくること”は自分が感じた小さな違和感を形にできることだと私は思っています。今、皆さんの周りには新しいことにチャレンジするための選択肢が既にたくさん存在しています。皆さんはそれを用いながら社会に対して、次の誰かのために新たな選択肢をつくることができます。それがスタートアップであり、そんな人たちが集まっているのが、スタートアップエコシステムです。

スタートアップが未来をつくるために立てるべき「問い」とは

では、スタートアップが未来をつくるためには立てるべき「問い」とは何でしょう。私はどうしようもなくやりたいと思うこと、根底に持っておきたいもの(=Being)を自分自身に問うことが大切だと思っています。うまくいっていないときはもちろん、うまくいっているときですら、自分の”Being”を振り返る。その上でいろんな経験や挑戦を重ねて、課題に対して解決する方法(=Doing)を試してみてください。

冒頭も話しましたが、スタートアップは今、可能性に満ちています。成長するために、社会を変えていくために何をすべきなのか。時には留まることも必要かもしれません。常に自分に問い続ける姿勢を持っていてほしいと思います。

登壇者略歴(藤本 あゆみ氏)

Plug and Play Japan株式会社 執行役員CMO
一般社団法人スタートアップエコシステム協会 代表理事

2002年キャリアデザインセンター入社、2007年4月グーグルに転職し、人材業界担当統括部長を歴任。「Women Will Project」のパートナー担当を経て、同社退社後2016年5月、一般社団法人at Will Workを設立。その後株式会社お金のデザインを経てPlug and Play Japan株式会社にてマーケティング/PRを統括。2022年3月に一般社団法人スタートアップエコシステム協会を設立、代表理事に就任。米国ミネルバ認定講師。文部科学省起業家教育推進大使、内閣府規制改革推進会議スタートアップ・投資ワーキンググループ専門委員。

受賞者インタビュー

“動物に優しくなる”ためのソリューションを提案したい

プロジェクト名:

One by One Music
畠山 祥さん

人間と動物が一緒に住むことが当たり前になり、留守番などで一人ぼっちになったペットが分離不安症という精神病を患ってしまうといった課題が生まれています。One by One Musicは世界初の実験結果や自動で作曲するプログラムによって、人間も動物も飽きさせない音楽を制作し、サブスクリプションモデルによって動物のためのリラックス音楽を提供します。

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芽が出るまで、走り続けることが大切

プロジェクトが発足した背景には「そもそも人や動物にはどうして耳がついているのか」という問いがあります。「耳が24時間危険を察知するために稼働している気管だとしたら、ストレスを感じる大きな要因になっているはず。そして人と同じように、動物も音楽で癒すこともできるのでは?」と。日常の当たり前を問い直し、様々な検証をしていくことでこのプロダクトは生まれました。

 

直近の3ヵ月では、QWSに入会している企業との実証実験や協業に向けたプロジェクトを進めてきました。QWSステージに出るのは今回で3回目。複数回の登壇を経て、QWSでの認知度が高まっている実感があります。また、1月にアメリカで行われた世界最大のテクノロジー見本市「CES 2024」に参加したことで「一緒に何かできないか」と声をかけていただく機会も増えました。プロジェクトの活動実績をコツコツ積み上げることが、今回の賞にも繋がっていると思います。

 

新しい試みというのは、その価値が世の中に認められるまでに時間がかかるものです。だからこそ、必要な人や場所に届くまで続けることが重要ではないでしょうか。テクノロジーが発達し、人間が人間に対して抱える課題を解決できるようになってきた今、自然や動物の課題に目を向ける人が増えてきていると思います。そんな中で、動物に優しくなるための一助としての音楽、という新たな選択肢の可能性を提示していきたいです。

こどもの創造性と好奇心が溢れる世界の実現を

プロジェクト名:
Child Play Lab. 猪村 真由さん

Child Play Lab.は闘病生活を送るこどもたちが自らの可能性を信じ、挑戦できるような入院環境・療養体験を提供するために活動しています。「さぁ、ベッドの上から冒険を始めよう!」を合言葉に、長期にわたって闘病生活を送るこどもたちが創造力・好奇心を引き出せるような遊びのブランド「POCO!」を運営し、現在は全国5つの病院で小学生を対象にした「アドベンチャーBOX」を展開し実証実験を行っています。

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全てはこどもたちのワクワクを引き出すために

QWS チャレンジ生として活動するのは実は2回目。QWSチャレンジ11期生として活動していたときは学生団体でプロジェクトは構想段階でした。当時は拠点が離れていたこともあり、正直うまくQWSを使いきれていなかったのですが、およそ2年の月日が経ち、今回は起業家として、開発した闘病中のこどもたちを対象にした遊びブランド「POCO!」と共に、気持ち新たにQWSでの活動をスタートしました。

 

これまで「こどもたちのワクワクが生きるエネルギーになるきっかけを!」という思いのもと、常にこどもたちのワクワクを引き出すための選択肢を模索し続けてきました。今回のQWSステージでは一人でも多くの人に私たちの想いを届けるべく、ピッチに臨みました。結果的に賞をいただくこともでき、私たちが描く物語の一つの集大成を見せることができたと思っています。

 

今後は一人でも多くのこどもたちが、アドベンチャーBOXをはじめとする「POCO!」でのプログラムを通じてベッドの上から冒険を始められるよう、より一層、病院・自治体の皆さんとワンチームで進めていきたいです。現在は、複数の病院と連携しながら実証実験を進めているので得られたフィードバックをもとに、アドベンチャーBOXの体験価値の向上を目指しています。私たちにとってQWSはアイデアが旅立っていく港のような空間。これからもこどもたちをハッピーにする方法をたくさんの大人たちと一緒に考えていきたいです。

提唱者として「地元愛」を問い続ける

プロジェクト名:
Soullume Project 山澤充希さん、茂木悠真さん

Soullume Projectは伝統野菜をブランド化することによって多くの人に伝統を知ってもらい、一緒に「地元愛」とは何かを考えながら、新しい地方創生のあり方を模索するプロジェクトです。現在は生産者・農地が年々減っている「江戸東京野菜」を多くの人に知ってもらうため、滝野川人参を使った「入魂ドレッシング」を開発。今後は都内アンテナショップでの展開を予定しています。

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成長するプロジェクトとチーム、集大成として挑んだ二度目のQWSステージ

「答えは人を分け隔て、問いは人を結びつける」ーー。ピッチ冒頭の言葉は、校長先生が始業式にくれた言葉です。その言葉通り僕たちは6カ月間多くの問いを投げかけ、答えに捉われず対話を続けました。直近の3カ月は「江戸東京野菜」から「地元愛」へとテーマが変化し、問いを深めることを心がけました。QWSの会員たちと「問い」を起点に雑談するブレスト会「Question Break」では江戸東京野菜クイズを考案し、参加者と江戸東京野菜や地元について議論。そこで得られた気づきやフィードバックをもとに参加した「QWS CROSSTAGE」では多くの方々と地元愛について語り合いました。

 

QWSチャレンジに応募した半年前を振り返ると、チームとしての成長を実感します。今回はがむしゃらに動いていたこれまでの3カ月とは異なり、スケジュール管理からチームでのタスク確認まで試行錯誤し、精一杯の準備をして、QWSステージ本番に挑みました。その甲斐あって、心からやり切った! と思えるパフォーマンスができたし、結果として二度目の優秀賞を受賞することもできました。学校や家でもない、新たな出会いと発見をくれるQWSという第の場所でこれからも対話を深めていきたいと思います。

未完のアントレプレナーシップ教育を当事者として追究

プロジェクト名:
Aethamelon 鈴木大輝さん

Aethamalon(エテメロン)現在のアントレプレナーシップ教育に疑問を持った高校生、大学生によるプロジェクトです。これからの流動的で不確実な社会を生きる高校生を対象に、ビジネスモデル構築に限らず積極性、創造力、探究心など「起業家精神」を養うためのアントレプレナーシップ教育プログラムを独自に開発することを目指し、活動しています。

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アイデアをカタチに。プロトタイピングに挑んだ3カ月間

早稲田大学の学生団体での出会いがきっかけで発足したこのプロジェクト。「当事者世代から既存のアントレプレナーシップ教育を変えたい」というアイデアから実際にプログラムとして形にするところまでを目指し、QWSで活動してきました。QWSチャレンジの応募期間が年末年始と被っていて、新年早々、メンバーでカフェに集まって応募資料を作成したのも今となっては良い思い出です。

QWSではたくさんの大人と出会い、対話を重ねながら高校生のアントレプレナーシップ教育のあり方を模索してきました。会員同士が「問い」を起点に気軽にコミュニケーションできるという、相談しやすい環境に魅力を感じています。僕らの活動期間には同世代のプロジェクトもいたので、彼らから刺激を受けることもありました。おかげで目標としていた自己理解を起点とするワークショップのプロトタイプを開発し、実際にいくつかの高校で実施することもできました。

 

しかし、まだまだ課題や改善点がたくさんあります。今後はより多くの学校で実施できるよう、プログラムの設計やワークショップとしての場作りもブラッシュアップをしていく予定です。ゆくゆくはQWSに所属する企業や自治体とも連携していきたいと思っています。アントレプレナーシップ教育に注目が集まる昨今、期待も多く寄せられているのを感じます。絶対的な正解はないと思いますが、QWSで活動する先輩起業家の方の背中を見ながら、これからも僕らが信じるアントレプレナーシップ教育のあり方を追究していきたいです。

「QWSステージ#18」
キーノートと17プロジェクトのピッチ映像はこちら

「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を募集しています

2024年5月から活動を開始したQWSチャレンジ第19期のメンバーは、年齢も領域も様々。新しい仲間、新しい自分、新しい世界。どんな出会いが待っているのでしょう。それぞれのプロジェクトの問いは、どのように磨かれ、放たれていくのでしょうか。次回のQWSステージ#19は、2024年7月末に行われます。QWSから生まれる「可能性の種」をお楽しみに。

現在、QWSチャレンジ第20期を募集しています。詳しくはこちらをご覧ください。

QWSチャレンジ第20期を募集中

QWSステージ#18登壇プロジェクト一覧

1.  FOODLINK PLATFORM|廃棄食料でアフリカの飢餓問題を解決できるか?(アフリカと日本を食でつなぐには?)

2 育て方改革と真の働き方改革|若い世代のAI人材育成が日本の労働人口不足やイノベーションの鍵を握るのでは?

3. Pubble| SNSにより思考の単純化が進む中、どうすれば複雑な社会課題に向き合うための知的体力を育てられるか?

4. ビヘイビアプロジェクト| 私たちのふるまいはどうやって作られたのか?

5. Soullume Project| 江戸東京野菜は東京の新しいグルメブランドになるのか?

6. 帰り道にぜんざい贈る屋「達磨善哉」|会社の帰り道に食べるぜんざいは、人々のココロの健康に寄与するのか?

7. 渋谷土産(建築土産)|渋谷から建築の「なくなる」と「うまれる」の間にある可能性を追求できないか?

8. Child Play Lab.|心から湧き出る願いや目標は、生きる力になりうるのか?

9.  オフィス De コンディショニング|デスクワーカーの肩こり腰痛に対して、理学療法士が貢献できる事は何か?

10. アンサンブル・フォー・オール♫|楽器が演奏できなくても、仲間や家族とアンサンブルを楽しめるか?

11. One by One Music|動物が音楽を聞く世界は訪れるだろうか?

12.  完成しない家| 「日々の暮らしの中で、ウェルビーイングに生きる力を養うには?」

13. Deathフェス実行委員会|お墓に入りたいですか?

14. n拠点|拠点があることによって生まれる価値とは?

15.  まなびぱれっと|先生とみんなが安心して混ざり合うとどんな未来が待っているのか

16.  Aethamelon|高校生の高校生による高校生のためのアントレ教育とは?ー夢を現実にする第一歩ー

17. アーバンサバイバル|都市の当たり前がひとつでも欠けたら?

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