QWSステージ#08~問いとアクション。果てなき問いとその先に待つ未来~

QWSステージ

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3ヵ月間、問いと向き合い続けてきたプロジェクトメンバーたちの晴れ舞台、QWSステージ。今回はQWSステージ#08の様子とSHIBUYA QWS Innovation協議会(以下「SQI協議会」)による厳正な審査の結果、見事表彰された5チームのSHIBUYA QWS(以下「QWS」)で見つけた価値や、次のQWSステージへ向けた意気込みをお届けします。

テキスト=秋山和哉・佐藤琴音・中島貴恵 編集=守屋あゆ佳 写真=黒田拓海

QWSステージとは、3ヵ月に一度、QWSに集うプロジェクトメンバーがそれぞれの活動の中で見つけた「可能性の種」を放つ場です。QWSステージ当日はQWS内に舞台が設営され、発表するプロジェクトは、3分間で各々の活動成果についてピッチを行います。

10月22日に開催されたQWSステージ#08では16プロジェクトが登壇し、各々の成果を発表しました。今回からSQI協議会による審査員賞が設けられ、全16プロジェクトのなかから最優秀賞に「渋谷肥料」が選ばれました。また、優秀賞として「GOOD FOOD GOOD MOOD」、「stitch_」、「Sustainable Game」の3プロジェクトが、さらに企業賞として味の素賞を「PLOTELINK」が受賞しました。

キーノートトーク

QWSステージでは、毎回各分野の第一線で活躍する方をゲストにお招きし「キーノートトーク」を実施しています。今回のゲストは、認定NPO法人スローレーベル理事長であり、東京2020パラリンピック開閉会式ステージアドバイザーを務められ、QWSコモンズでもある栗栖良依さん。「身体で問いを生む」というテーマでお話いただきました。

問うことで困難を乗り越えられた

「16歳のとき、『オリンピックの開会式をやりたい』という夢ができました。思いつく限り仕事ができる方法を実践していた矢先、右膝に悪性腫瘍ができる骨肉腫という病気になってしまい、一度は夢を手放したんです。でも2012年のパラリンピックロンドン大会に出会って、もう一度夢に向かおうと決めました。

「障がいのあるなしに関わらず評価されたら良いと思うけど、そもそも障害者は同じ舞台に立つことができない。それってすごくフェアな社会とは言えないのではないか?どうすれば障害のある方たちが舞台に立てるのだろう?と問うたわけです。そこで私たちが考え付いのが、アクセスコーディネーター(※1)やアカンパニスト(※2)という専門人材を作り出すことでした。困難にぶつかりながらも、問いを立て、自分なりの回答、解決策を見いだしながら活動し、2014年リオ大会閉会式と2021年東京大会開閉会式でパラリンピックのステージアドバイザーを務めることが出来ました。」

※1 ひとりひとりにとって最もよい環境をさぐり、創造性が発揮できる環境を整える人

※2 お互いの充実した創作体験や、最高の作品づくりを目指し活動に取り組み、創作の可能性を一緒に広げる伴奏者

頭ではなく、身体で問い続ける

「問いと言うと『論理的に思考を巡らして作るもの』そんなイメージがあるかと思います。私にとっての問いは、頭で考えることではなく、身体で動きながら考え続けることなんですよね。行動を起こすとうまくいかないことや失敗が次のクリエイションのヒントに必ずなります。その都度乗り越える方法を、クリエイションして次のアクションをする。それをひたすら繰り返していたら、『オリンピックの開会式をやりたい』という16歳の頃の夢を実際に叶えることができたんです。」

「今の社会って失敗したらもう駄目みたいな空気もあるけど、私は病気になって死にかけたけど、それでも今何とかこうして元気に生きて、皆さんとお話できてるので、絶対何とかなる。とにかく身体で動いて問い続け、やり続けて、いろんな夢とか目標を考えていただければなと思います。」

 

受賞者インタビュー

渋谷から「楽しい真剣勝負」を仕掛ける共同体

渋谷肥料 坪沼敬広さん 清水虹希さん 野田英恵さん

渋谷肥料は、渋谷を「消費の終着点」から「新しい循環の出発点」にシフトするプロジェクトです。渋谷から出た生ごみを肥料・堆肥に変えて、栽培キット・スイーツ・コスメの開発と販売を進めています。

 

自分たちだからできること、あなたとだから生まれること

野田:私は渋谷肥料を、やりたいことを形にできる共同体をつくる場と位置づけています。過去に「生ごみの処理をしているの?」と言われたこともあって、この3ヶ月は世の中でマイナスと思われているものをプラスに変えるなど「自分たちだからできること」をチームで問い直してきました。

清水:メンバーはお互いのビジョンに共感していますね。社会に対する違和感があるからこそ、希望を持てるものを皆の力で生み出す循環のシステムをつくりたいです。

野田:QWSに関わる皆さんや身近な人たちと一緒に「いいね!」と言えるものを、その先にいる人たちへ届けていきたいです。

清水:QWSでは頑張っているプロジェクト同士が交差することが新鮮で、色々な人とのつながりに価値を感じます。今後も共創の場として一緒に前進していきたいです。

坪沼:現在は通年販売できる商品の開発を進めており、ワクワクすると同時に試行錯誤をしています。そんな時ほどメンバーやQWSの皆さんとのパーソナルな支え合いに助けられていると実感します。

今後も「あなたとだから生まれるもの」を大切にしながら、この取り組みを広めていく楽しい真剣勝負を仕掛けたいです。そして渋谷に関わる問いを掲げているからこそ、地域の人たちにも「渋谷肥料があってよかった」と思っていただける存在になりたいです。

 

誰もが”おいしい食事”を楽しめる足掛かりをつくりたい

GOOD FOOD GOOD MOOD 池田瑞姫さん

バイタルデータや心理指標を利用して、定性的な「おいしい」を、定量的に視える化することで食事文化の再構築を行うプロジェクトです。人々が「食事」で自分たちの総合的健康にアプローチできる食文化をつくりたいと考えています。

 

心強い仲間とともに、次のフェーズへ

私たちは、プロジェクトの起点として、糖尿病疾患を持つ食事に制約がある人も「”おいしい”を楽しめるようになる」世界を目指して、バイタルデータを基点としたアプリ開発をしています。身体の状態をモニタリングすることで、疾患下でも、自分で自分が食べるものを意思決定できる世界をつくりたいです。それができると、食べることだけでなく人生も楽しいものに変わっていくと考えています。食べるものを意識的に自己決定することは、ひとつの生活習慣に過ぎないかもしれませんが、その積み重ねは人生単位での変化をもたらすと思っています。

疾患治療のためのアプリを開発することには、想像を絶する工程が必要でした。権利取得や各種申請、治験の実施等非常に多くの人たちの関わりを無くしては成立しないものがたくさんあります。お力添えくださるみなさまには感謝が尽きないですし、何よりも皆さんが私たちと関わってよかったと思えるようなチームであり続けようと決めています。

繋がることで伝えたい、ものづくりのあたたかさと格好良さ

stitch_ 平澤良樹さん

stitch_は一枚の服に想いを込めるファッションデザイナーと、買い手を直接繋ぐプロジェクトです。自らの価値軸に沿った選択をする文化をつくることで、作り手も買い手も好きなものと向き合い、クリエイションを追求できるビジネス基盤を構築することを目指しています。

 

より服作りの現場の中へ、そして本質へ

stitch_として服の産直アプリの制作に取り組むうちに、ものづくりのリアルな現場をもっと知らなければ、自分達が本当にやるべきことは見えてこないと感じるようになりました。クラウドファンディングを経て、現在は産地の取材を進めています。現地で工場の方にお会いすると、後継者不足など厳しい状況の中、東京から若い人が来たというだけですごく嬉しそうな顔をしてくれる。そこに意義を感じるし、そこでの対話がとても楽しいです。

QWSでは他プロジェクトと一緒に展示を行うなど、コラボレーションを大事に活動しています。自分の中で生まれる問いや違和感を深掘る人達がここには居る。皆どこかに共通する感覚があるから、必ずしも同じ分野ではなくても共創していけると思っています。

stitch_はこれからも、産地やデザイナーさんの服作りの現場を伝えることを通して、日本のものづくりの技術の素晴らしさ、格好良さを伝え、「この人が作ったから買う」という感覚を当たり前にしていきたいです。僕はリアルなこと、ぬくもりに価値を感じています。人々を直接繋げていくことに意味があるし、人が関わることで生まれる、新しい視点や想いが込められた服は、ただの物ではない存在だと思うんです。10年後20年後のために、自分達の世代、若い人達に、ものづくりの魅力を繋げる存在になりたいです。

社会を変える体験の楽しさを、仲間と共に

Sustainable Game 山口由人さん

Sustainable Gameは「愛を持って社会に突っ込め」を理念に掲げ、「誰1人取りこぼさないゲーム(社会)モデル」の実現を目指すプロジェクトです。企業と中高生の相互の状況を深く理解し「次世代と大人」という二項対立のない共創環境をオンライン上に構築するプラットフォームを実装します。

受け継ぎ拡げたい、大切な繋がりと想い

この3カ月は、ソーシャル・リアリティ番組「SPINZ」の放送が終わり、成果と共に、コンテンツとしての完成度とプログラムとしての両立の難しさなど、課題も見えてきた時期でした。「番組の世界観を作れたけれど、社会の中では何を変えられたの?」、プロジェクトのメンバーからはこんな問いかけがありました。メンバー達に対して「すごいな」と最近改めて感じています。それぞれ異なる距離感で活動に関わっている中で、お互いの状況を理解し合い、困難があっても助け合える。居場所であり、成長できる場です。

QWSも偏差値などの数字だけではない評価をしてくれる居場所だと感じます。コモンズ会員さんの言葉に励まされたり、同世代の会員さんと悩みを共有したり。

QWS内外の同世代の団体から相談をいただくことも増えてきました。今後は、今取り組んでいる「Flare」(※1)というインフラを使い、例えるならプロジェクターを設置したら誰でも映画が見られるように、誰でも、例えば地方にいる未成年でも新しい取り組みを実行でき、周りからサポートが得られるような仕組みを実装したいです。

チーム強化のための合宿やワークショップも準備中です。活動の中で「メンバー達の青春を預かっている」と気づかされたので、代表としての貴重な経験を還元したいし、僕が高校を卒業して代表を引き継いだ後も、ずっと残る団体にしていきたいです。

※1  社会に対して関心が高い中高生と企業がESG課題解決に向けてオンラインで共創を行えるプラットフォーム。現在、WEBサービスとしてのローンチ準備を進めている。

「食」から社会、生き方を見つめ直す

PLOTELINK 稲葉リカさん

PLOTELINKはタンパク質不足の世界を生き抜くための仕組み作りにチャレンジしています。「地球に住み続けられる食事」を目指し、オリジナルプラントベースフード『Rich Cube』(※1)の開発を進めています。

誰もが心地よく食事ができる世界をつくる

私は家畜が残酷な扱いを受けている動画を見たことがきっかけで「フレキシタリアン」(※2)という食生活を始めました。アニマルウェルフェアの他に、お肉を食べることは気候変動や「タンパク質危機」にも悪影響を与えていることを知り、現在は様々な思いからほとんどお肉を食べない生活をしています。しかし、当事者になって初めて感じたのは、食の選択肢の狭さ。外食でお肉を避ける事が難しかったり、家での料理もパターンが一定化しがちです。制約がある中でも、罪悪感なく、楽しく、美味しく食事をしてほしいと思い、選択肢のひとつとしてオリジナルプラントベースフード『Rich Cube』を考案しました。

現在、新潟市や新潟IPC財団の方々にご協力いただき、『Rich Cube』の製造ラインについて話しています。まずは認知度を高めるために首都圏を中心にPOP UPや飲食店とのコラボレーションをしていきたいと考えています。

『Rich Cube』が「心と体、そして動物・地球環境にも良い」と感じてもらい、プラントベースの食事を楽しむ選択肢のひとつとして選んでもらえるように、より魅力的な商品にしていきたいです。また、難しそうと思われがちなプラントベースフードに少しでも興味のある人たちがもっと簡単に始められるような世界を目指します。

 

※1 植物由来の原材料を使ったバターのようなもの。主原料はココナッツオイル、豆乳ヨーグルトやソルトが含まれている

※2 基本は植物性食品を中心に食べるが、時に肉・魚も食べる柔軟なベジタリアンスタイルを取る人のこと

※3 全て又はその殆どが植物由来から作られた食品のこと

『QWSステージ#08』
16プロジェクト、それぞれのピッチ映像はこちらから

QWSステージ#08-YouTube

「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を募集しています

11月から活動を開始したQWSチャレンジ第9期のメンバーは、年齢も領域も様々。新しい仲間、新しい自分、新しい世界。どんな出会いが待っているのでしょう。それぞれのプロジェクトの問いは、どのように磨かれ、放たれていくのでしょう。
次回のQWSステージ#09は、2022年1月末に行われます。QWSから生まれる「可能性の種」をお楽しみに。

現在、QWSチャレンジ第10期を募集しています。詳しくはこちらをご覧ください

QWSチャレンジ第10期を募集中

QWSステージ#08登壇プロジェクト一覧

1. GOOD FOOD GOOD MOOD|私たちはなぜ、食事をするのか?-バイタルデータで紐解く「食事」-

2. imI-イムアイ-|優しい社会を創るため、フェミニズムと共に何ができるのだろうか?

3. MONO Investment|金融の世界における “IA(知能拡張)“の可能性とは?

4. 謎解きロゲイニング|謎解き×街歩きのエンターテイメントが実現する世界とは。

5. stitch_|一枚の服に愛着を持つには?

6. KAMADO|文化とお金を社会に循環させるには?

7. External Brain|ツールによる脳の拡張は才能という概念をなくすことはできるのか?

8. SCUAD|バーチャルファッションは人も環境もハッピーな未来のおしゃれの入り口になれるか?

9. I _ for Me|女性のショーツはエロくなきゃいけないの?

10. 渋谷肥料|渋谷を「消費の終着点」から「新しい循環の出発点」にシフトできないか?

11. PLOTELINK|タンパク質不足の世界を生き抜くには?

12. ArtMeet|実際にアート作品を観た価値、を考慮しながらアート作品を実際に観た体験を共有するにはどうしたら良いだろうか?

13. Quisine|牛も人も安心してげっぷできる世界をつくるには?

14. SHIBUYA サーキュラー広告プロジェクト|屋外広告を循環するには?

15. march on|工芸と工業の間にある「新しいものづくり」の交差点とは?

16. Sustainable Game|中高生と企業の共創は社会の二項対立をなくすイノベーションを起こせるのか?

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