QWSステージとは、3カ月に一度、SHIBUYA QWSに集うプロジェクトメンバーがそれぞれの活動の中で見つけた「可能性の種」を放つ場です。QWSステージ当日はQWS内に舞台が設営され、発表するプロジェクトは、3分間で各々の活動結果についてピッチを行います。
先日、1月22日にQWSステージ#05が開催され、問いに向き合い活動を続けてきた10プロジェクトが発表。その中から「RISEbyStudyTM」「I’mbesideyou」「GrieFuu」「渋谷肥料」の4チームが、SHIBUYA QWS Innovation協議会(以下「SQI協議会」)の審議によって、QWSでの活動期間の延長の支援を受けることが決定いたしました。
今回は、QWSステージ#05の様子と、SQI協議会の継続支援が決定した4チームのQWSで見つけた価値や、次のQWSステージへ向けての意気込みをお届けします。
テキスト=長谷川菜月・渡辺舞子 編集=渡辺舞子
キーノートトーク
QWSステージでは、毎回各分野の第一線で活躍する方をゲストを招きお話を伺う「キーノートトーク」を実施しています。今回のゲストは、株式会社ボーダレス・ジャパン代表取締役社長の田口一成さん。世界13ヵ国で38社のソーシャルビジネスを展開する田口さんに、自身の活動を通して問いへの向き合い方をお話いただきました。
本質を「問う」ことが、成功につながっている
「新しい事業を立ち上げるときは、本質的な原因を『問う』ことを大切にしています。解決したい社会問題が起きている裏側では、何が起きているのかを深く考察し、突き止めた原因に対して対策をたて、ビジネスモデルを作る。そうすると、日々取り組むことが社会変革に直結するので、この実感がやりがいになって上手くいかない時期でも踏ん張れるんです。そして最終的に、成功することに繋がっているのだと思います。」
最後に、ボーダレス・ジャパンが運営する「ハチドリ電力」のコンセプトムービーをご紹介いただきました。
「僕ら一人ひとりは『微力ではあるが、無力ではない』からこそ、立ち上がることが大切だと思っています。今の立ち位置で、今の実力で、今の状況で、それでもできることをやっていく。このことが、より良い社会を作っていくのだと信じています。」
継続支援プロジェクト 代表者インタビュー
企業がもっと能動的に貧困削減に取り組める社会をつくるためにできることは
RISEbyStudyTM 大崎ビリーさん
RISEbyStudyTMは、世界初の生活支援型高度専門人材育成機関です。実は、先進国のなかでも相対的貧困に陥っている人の割合が高い日本。RISEbyStudyTMでは、無償で生活と学びを支援し、就職までをトータルサポートしています。
世界を変えていくのは、自分
僕たちは、QWSチャレンジの3ヶ月という活動期間を100%意味あるものにするために、自分たちには高すぎるくらいの目標を設定して、多くの方にレビューしていただきながら、確実に成果を出すことを強く意識しています。
今回のQWSステージでは、新たに見つけた「私たちが貧困を受け止めることで、拡大させてしまうのではないか?」という問いを投げかけました。これは、RISEbyStudyTMがセーフティーネットとなることで、リストラをする企業が増えてしまう可能性が見えたことで生まれた問いです。これからRISEbyStudyTMが担っていくのは、社会変革でもあると同時に、企業の変革、企業トップのマインドチェンジでもあるとわかった重要な問いでした。
やりたいことがあるなら、思いの丈を持ってQWSに来て欲しいです。QWSには色んな分野の専門家が集まっているので、ここに来れば、どんなものでも実現できると思います。ここに来れば、自分も世界が変えられる。ぜひ体感して下さい。
世界中の人たちが唯一無二の存在であることをみえる化して理解させるには
I’mbesideyou 神谷渉三さん
I’mbesideyouは、オンラインコミュニケーションでの一人ひとりの表情や顔の向き、音声、姿勢などを総合解析し、人以上に人に寄り添う、幼馴染のようなAIを開発することを目指しているプロジェクトです。
やさしい人が損をする社会構造を変えたい
私たちの事業はzoomなどの動画素材を、一旦クラウドに預けてAI解析を行うのですが、QWSで会員やスタッフの皆さんにヒアリングしたところ、「プライバシーが心配」というフィードバックを多くもらいました。確かにセキュリティーやプライバシー面を懸念する企業もあったので、昨年末に、よりプライバシーに配慮した新製品をゼロから作り上げました。大変でしたが、プロトタイプが完成して4月にリリース予定です。さらに、インドでのローンチを計画しています。まさに、QWSチャレンジに参加しなければ生まれなかったサービスです。
もともと今の仕事を始めた理由が、息子の教育環境を変えたいという思いから。息子が生きるために父親として何をすればいいのか考えた時に、「社会全体を他人同士が尊敬し学べる学校にする」というビジョンが浮かびました。次の世代を、“私たちの子どもたち”と思えるようになると世界は変わっていくと信じています。
生と死の境界線がときほぐされた世界をつくりたい
GrieFuu 中澤希公さん
大切な人を亡くした時、残された人の心は一人ぼっちです。自分の感情と向き合い、悲しみを悲しみで終わらせずまた新たに一歩踏み出せるように、私たちは、死別の悲しみに寄り添い、肩に乗った悲しみがふーっと抜けるような感覚を届けていきます。
悲しみと友だちになって、一緒に歩いていく
死は誰にとっても身近で、GrieFuuは誰もが参加できるプロジェクト。だからこそ、「私にしか伝えられないことってなんだろう?」といつも自分に問うようにしています。QWSでたくさんの人の価値観に触れながら、心の奥深くにしまいこんでいた、過去の感情に一つひとつ向き合っていきました。今の自分は「悲しみと一緒に歩んでいる」と気がつくことができたのは、大きな一歩だったと思います。
私は、よく亡くした母のことを思い出して、母が心の中で生きていけるように思いを伝えています。私は、あの世とこの世の境界線をときほぐす、死を死で終わらせない世界観をつくりたいんです。人によって、悲しみも感情も、向き合い方も違います。自分の感情に素直になって、これからどう生きるかをじっくり考えられる、そんな場をつくってみたい。簡単には突っ走れない領域だから、これからも丁寧に進んでいきたいと思っています。
関わる全ての人が幸せになれる「循環」を渋谷からつくる
渋谷肥料 坪沼敬広さん
渋谷肥料は、渋谷を「消費の終着点」から「新しい循環の出発点」にシフトするプロジェクトです。渋谷から出た生ごみを肥料に変えて、現在は栽培キット・スイーツ・コスメの開発と販売を進めています。
みんなの「思い」をのせて走り続けるチャレンジャー
僕たちは「こう思う、こうしたい!」という気持ちを軸にしてプロジェクトを進めています。みんなが楽しく一生懸命に取り組める道が、明るい結果に続いていると思うんです。QWSステージでは、本番直前まで自分たちが伝えたい「思い」を研ぎ澄ませることに集中していました。
QWSでは、会員も運営のみなさんも同じコミュニティのメンバーだと思っています。プロジェクトの進捗を一緒に喜んでくれたり、時にはガツンと背中を押してくれたり、みなさんとの毎日のコミュニケーションが僕たちの大きな力になっています。
プロジェクトを通じて様々な人たちの支えや期待に触れていくうちに、僕たちの中にある種の「使命感」が芽生えてきました。渋谷肥料はこれからは法人として、より多くの人や地域とつながり、渋谷から新しい循環の輪を生み出していきます。僕たちは常にチャレンジャー。これからも正直に、本気で、走り続けます。
「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を募集しています
2月から活動を開始したQWSチャレンジ第6期のメンバーは、年齢も領域も様々。新しい仲間、新しい自分、新しい世界。どんな出会いが待っているのでしょう。それぞれのプロジェクトの問いは、どのように磨かれ、放たれていくのでしょう。
次回のQWSステージ#06は、2021年4月23日に行われます。
QWSから生まれる「可能性の種」をお楽しみに。
現在、QWSチャレンジ第7期を募集しています。
詳しくはこちらをご覧下さい。
https://awrd.com/award/qws07
QWSステージ#05登壇プロジェクト一覧
- I’mbesideyou|オフラインよりオンラインの方が、人って理解できるんじゃないか?
- 政治村|若者はどうしたら政治を変えられるのか?
- mock-bank|工場におけるものづくりに携わる人は工場の外でも新たな価値を生み出すことができるか?
- jikan|スイッチ仕掛けのせわしない現代に移ろいの美しさを取り戻す照明とは?
- Rechroma|気候変動時代に生きる人々に求められる情報とは?
- GrieFuu|死別の悲しみに寄り添うことはできるのだろうか?
- RISEbyStudyTM|社会的課題解決と高効率な経済的持続性は両立可能か?
- 渋谷肥料|渋谷を「消費の終着点」から「新しい循環の出発点」にシフトできないか?
- ひらく研究所|今だからこそ、対話と熟議を通した私たちの「コモンズ」を再興できないか?
- Creators’ Hub|クリエイターが社会と共存し、自立し、価値を高めていくには?