渋谷から世界へ!「問い」から始まる『QWSチャレンジ』

QWSチャレンジ

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11月1日のSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)開業に先だって、「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を推進する公募プログラム『QWSチャレンジ#01』の採択会が開かれました。本レポートでは、その模様をお届けします。

「問い」を起点にしたプロジェクトとはどんなものなのか、どんな視点でプロジェクトが選ばれているのかなど、『QWSチャレンジ』にご興味のある方は、ぜひ今後の参考にしてください。

テキスト=野本 纏花 写真=森川敏 編集=永谷聡基

QWSチャレンジとは?

「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を推進するプログラムです。公募によって採択されたチームは渋谷駅直結のプロジェクトスペースが無料で利用可能です。自らの感性に基づいた自発的な「問い」を持ち、多様なプレイヤーを巻き込みながら進めることができる内容であれば、分野や規模に制限はありません。未完成歓迎です。

第一弾エントリーは33件!「問いの感性」が共鳴すれば採択

第一弾エントリーは33件でした。「あなたの問いは何ですか?」という質問に答える形で集まったプロジェクトには、応募者の方々が日頃感じている数々の「問い」や、社会に対する希望など、熱い想いが詰め込まれていました。

採択するプロジェクトの選定方法は、採択員の誰か1人でも、「応援したい!」と手を挙げること。応募者と採択員の間で、「問いの感性」が共鳴すれば、採択となるのです。

言うまでもなく、人々が抱く問いには、正解も不正解もありません。しかし「応援したい!」と自ら手を挙げるからには、採択員にとっても相応の覚悟が必要となります。すべてのプロジェクトを査読した上で、ひとりずつ自分が応援したいプロジェクトを、その理由とともに発表していくことになりました。

「問いの感性」は多種多様

最初に、ロフトワークの林 千晶さんが取り上げたのは、「なぜ世代間ギャップは縮まらないのか?」と疑問を投げかけた「IM:I’m Shibuya」です。「私自身、これから高齢者になっていくけれど、高齢者という枠組みにははまりたくないと思っていて。年齢を越えて人と人がどう交わっているのかを渋谷で調べるというのは面白いと思って、すごく興味を持ちました」

次に、ハヤカワ 五味さんは、「どうしたら女の子がエンジニアリングに興味や自信を持てる?」という問いを投げかけた「STEMee」をピックアップしました。「私もずっと同じようなことを疑問に思っていて、例えば『女の子って、数学は苦手だよね』と一切言わずに男女平等で数学を教えたら、数学の点数に男女差は出ないけれど、逆に『女の子は文系の方が得意だよね』と言われる環境だと、理数系に進む女性は圧倒的に少なくなるんですよね。こうした現象がデータとしてありつつ、一部反証的な統計データも出てきているけれど、実際にプロジェクトとして行った場合、どういった結果になるかがとても気になる。バービー人形をはじめとして、今、ジェンダーレスをコンセプトにしたおもちゃがいろいろと出てきている中で、「STEMee」のような工学に振り切ったものもあるといいなと思ったので、私個人として応援したいと思っています」

東京藝術大学大学院 国際芸術創造研究科 教授の熊倉 純子さんが取り上げたのは、「アートや表現が、もっともっと身近になるには?」という問いを立てた「KAMADO KUJI」です。KAMADO KUJIとは、気になるアートや体験に少額を入札すると、その中で当たった誰かが格安で購入できるかもしれない、というもの。「アーティストは、学生の間であれば自分の作品を待ってくれている先生がいるけれど、卒業して一歩社会に出れば、誰もあなたの作品は待っていないという過酷な現実を知ることになる。そんなときに、作り手にとっては自分の作品に興味を持ってくれたことが少しでもわかる仕組みがあるとうれしいし、買い手にとってはゲーム性もあって、もしかしたら手に入るかもくらいのバランスがちょうどいいと思いました」と、KAMADO KUJIに興味を惹かれた理由を解説しました。

左から、株式会社スマイルズ 代表取締役社長 遠山正道さん、東京藝術大学大学院 国際芸術創造科 研究科長 熊倉純子さん、株式会社 ウツワ 代表取締役 ハヤカワ五味さん

QWSだから向き合える「問い」

今回の採択会の中で、大きな議論を呼んだプロジェクトが2つあります。

1つ目は「『片側エスカレーター』をなくすにはどうすればいいか」という問いを立てたプロジェクト。「疑問提起はすごくいい。エスカレーターの片側だけに乗るのは本当に問題だと思っているけれど、それに対するソリューションが1mmもないので、採択していいものかどうか判断しかねるんですよね」というハヤカワさんに対し、「東京ではエスカレーターの右側ははやく行けるものとして街が成り立っているから。両側に乗ればいいとみんなが思えばそうなるわけで。今、やめようという流れになってきてるよね」と林さんも意見を重ねます。東京大学生産技術研究所 教授の野城 智也さんも 「気になるけど、もしかすると素朴に疑問を持っているだけかもしれない」と懸念を示したものの、採択員の多くが気になるということで、大いに議論が盛り上がりました。

2つ目は「ただ生きているだけで 最低限の生活を賄うだけの価値を 人は生み出すことが出来るか?」という問いを立て、行動データを売ることで、その人が生活出来るだけの価値を生める仕組みを模索するというプロジェクトです。山谷のホームレスの人たちと活動を続けている熊倉さんは、このプロジェクトが気になった理由について、次のように述べました。「福祉分野の人が行き詰まるポイントとして、ホームレスが何人減ったかという成果がないと、政府や自治体からは助成金が下りないという課題がある。でもホームレスであることを自ら選択して、ホームレスであること自体が幸せであるという人もいる。世間は絶対に認めたがらないけれど。ホームレスがスポーツやアートに関わろうとすると目くじらを立てられるのがとても残念だなといつも思っているので、私が日頃抱えている問題意識とも重なって、気になりました」。野城さんも「いろいろな問題は気になるし、危うさを感じるけれど、そこがいい。なんとなく忘れがたい」と語り、こちらも熱い議論が交わされました。

右から、東京大学 生産技術研究所 教授 野城智也さん、慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授 南澤孝太さん、株式会社ロフトワーク 代表取締役 林千晶さん

「問い」の力で渋谷から世界へ

続いて、慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授の南澤 孝太さんは、「先進的なシニアによる街の再発見プロジェクト」をセレクト。アクティブシニアが渋谷の今と昔を感じられるVR映像制作に取り組むプロジェクトです。「80代、90代の人たちが車椅子で出かけて、360度カメラで渋谷の街を撮りまくるって、すごく面白いじゃないですか。そんなコミュニティがQWSに来てくれたら、いい刺激になると思う」と、興味を惹かれたポイントを話しました。

野城さんが取り上げたのは「日常に溢れるモノが如何に個人に合わせ独自の進化を遂げることができるようになるか?」という問いを立て、3Dプリンターのリサイクル問題に取り組もうとする「Plastic Native」です。「今、社会でプラスチックが問題になっていますが、使用済みのプラスチックをもう一度3Dプリンターにかけてあげることで、本当に必要なものを作っていける可能性があって、いいなと思いました」と話す野城さんに対し、ロフトワークで3Dプリンターを保有する林さんも「確かに、既存の3Dプリンターには限界があって、簡単に作れる良さがある反面、作ってダメだったらゴミになるのが本当に課題。これは3Dプリンターでものづくりをしている人たちの世界共通の悩みだし、すごく可能性があると思う」と、プロジェクトが解決しうる社会課題に言及しました。

『QWSチャレンジ』エントリー、募集!

このように、「問いの感性」を通じて採択される可能性が大いにある『QWSチャレンジ』。採択員も本気になって、プロジェクトの新たな可能性を模索していきます。

日頃感じている違和感や好奇心など、自らの感性に基づいた「問い」をお持ちの方は、ぜひQWSに投げかけてみませんか?まだ誰も知らない、「未知の価値」につながるかもしれません。

『QWSチャレンジ』のエントリーをお待ちしています!

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