「死」をポップに語り、生を豊かにする文化を渋谷から。 多様な声と対話を通じて社会実装を加速させる「Deathフェス」

  • #QWSチャレンジ

「死」をタブー視せず、今をどう生きるかを考えるイベント「Deathフェス」を運営している一般社団法人デスフェスの市川望美さん。

2025年度中に活躍したQWSプロジェクトとしてインタビューをしました。プロジェクトのあゆみを振り返りながら、ブレイクスルーしたきっかけ、ターニングポイント等について伺っていきます。

「問い」を社会に投げかける場所として、渋谷・QWSを拠点に

市川望美(以下、市川):プロジェクトの原点は、共同代表の小野梨奈と長野でワーケーションをしていた時の語り合いです。彼女が自身の最期をどう迎えたいか話したことがきっかけで、火葬に代わる自然に還る新たな葬送「有機還元葬(堆肥葬)」を日本で実現しようと盛り上がりました。しかし、それを社会に実装するには、誰もが「死」についてカジュアルに語り合い、新たな選択肢を知る土壌が不可欠です。遠回りに見えてもそれが一番の近道だと考え、第一歩として立ち上げたのが「Deathフェス」でした。

 

新しい文化を生み出すなら絶対に渋谷だという直感があり、まだ社会にない「問い」を投げかける拠点として、QWSを選択しました。すぐに出口やソリューションを求めるのではなく、「問い」そのものを社会に投げかける姿勢を大事にしてくれる環境だと感じたからです。

 

多様な価値観との交差とメンターの言葉が社会へ届ける力を磨く

市川:QWSに入会して印象的だったのは、コミュニケーターやコミュニティマネージャーをはじめ、多くの方が私たちのアイデアを面白がってくれたこと。「死」というテーマに対してフラットに壁打ちの相手になっていただき、大きな自信になりました。一方で、ビジネスの第一線にいる方から「死のことなんて考えたくない」と敬遠されることもあり、多様な価値観が交差する環境だからこそ社会のリアルな反応や自分たちのターゲットを早期に知ることができました。

 

また、QWSチャレンジに採択された際、メンターの為末大さんから「社会に対してどういう伝わり方をするのかを考えないといけない」とアドバイスをいただきました。それまでNPO界隈で活動してきた私たちにとって、社会全体へ広く届けるための伝え方や、人を怖がらせない工夫の重要性に気づかされたのは大きな転機です。

さらに、ハヤカワ五味さんからの率直なフィードバックも、私たちにとって大きな転機となりました。「もともとエンディング周りのビジネスに興味があり、コンセプトも面白いのだけれど、こんなに壮大なことをやり切れるのか」という懸念でした。さらに「現地に参加していることは、あまり大っぴらにしたくないかも。どっぷり関わったら重すぎて、感情が引きずられそう」と、ストレートな本音を伝えていただきました。

でも、この忌憚のないご意見がすごく刺さりました。重たいテーマだからこそ、「絶対に仲間と楽しくやりきろう、イベントとしてカッコよく成立させよう」と心から思えたのです。私たちがどのような世界観を築くべきかを見つめ直す、重要なきっかけになりました。

こうしたメンタリングや多様な方々との対話が私たちの視野を広げ、事業の土台を固める力になりました。

 

フェスの広がりと、多様な繋がりから生まれた1年の成果

市川:この1年、Deathフェスは予想を上回る反響を呼びました。初開催の2024年から毎年4月14日の「よい死の日」に合わせて渋谷ヒカリエで開催している「Deathフェス」ですが、初年度から2,000人もの方が来場してくれました。重くなりがちな「死」というテーマをあえてタブー視せず、絶対にポップで誰でも語り合っていいような空気感にしたデザインも功を奏し、第2回、そして今年(2026年4月)開催した第3回と規模を拡大する中で、NHKをはじめとする数多くのメディアにも大きく取り上げられました。

 

さらにこの第3回の場では、私たちが提供できる価値が具体的な形になり始めています。開発した「死に関する問い」が入った「ひとくち死生観クッキーDeath!」や、QWSでの繋がりから生まれたヤマハ㈱ さんとのコラボによる、外界の音を遠ざけた静かなボックスの中で独自の音源と香りの誘導を使い、生と死のあいだを感じ体験型プログラム「AWAI」ボックスなど、目に見えるプロダクトが生まれています。

 

フェスのあり方を変え、事業化へ。10年計画を見据えたギアチェンジ

市川:今後の展開として、私たちは「Deathフェス」そのもののあり方を変えようとしています。あの空間で、あの日数でできることはある程度見えてきており、毎年規模の拡大を目指してフェスをやり続けるだけでは限界が来るという危機感を持っています。

 

2026年8月から、法人として4期目に入ります。当初から「このプロジェクトは10年やろう」と決めている中で、最初の3年が土台だとすれば、中長期の成果が出始める4年目、5年目はすごく大事な時期です。ここで明確なインパクトや成果に繋がる手を打っておかないと、「死をタブー視しない社会」には辿り着けません。だからこそ、今後は事業としての形を整え、一つひとつの取り組みをクロージングしていくフェーズに向かおうとしています。

 

ありがたいことに、死生観クッキーを使って「若者向けの対話ができないか」という自治体からの相談や、「新しい霊園をユーザーと一緒に考えたい」という企業とのお話、保険代理店からの連携の相談、長期的な取り組みなど、具体的な手応えも増えてきました。

 

今後は、どこに種があるか分からず広げてきたこれまでのやり方から、できることを絞り、取捨選択をしていくギアチェンジのタイミングです。これからも多様なネットワークを生かしながら、「死をカジュアルに語る」文化を確かな形にして社会に実装していきたいと思っています。

市川望美

一般社団法人デスフェス

市川望美

一般社団法人デスフェス

QWSでの活動プロジェクト名:リビングラボfrom Death(デスラボ)

一般社団法人デスフェスは、「生も死も、自分らしく選べるウェルビーイングな時代へ」をビジョンに掲げ、多死社会において「死」をタブー視せず人生と地続きのものとして捉え直すことができる社会の実現を目指し、今をどう生きるかを考えるイベント「Deathフェス」を運営しています。

2026年11月、一般社団法人デスフェスは、YOMI International株式会社・株式会社IVORYと一緒に、米国ニューヨーク・イーストビレッジの「RESOBOX」にて、日本の死生観・葬送文化をテーマとした国際文化イベント「Memento Mori in NYC: The Art of Japanese Life and Death」を開催します。

 

 

渋谷から世界へ!この挑戦をぜひ見届けてください。

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