渋谷のゴミ問題、「楽しく」解決する方法

NewsPicksタイアップ

  • 塩屋舞
  • 國光宏尚
  • 辻愛沙子
  • 九法嵩雄

(こちらの記事は2019/10/10に公開された、NewsPicks Brand Design制作記事の転載となります)

 

モノやサービスがあふれ、飽和しつつある現代。課題自体が稀少になっている今、問いを見つけ出す力や、異なる領域のアイディアを組み合わせる感性が求められている。

そんな中、今年11月1日、渋谷スクランブルスクエア15階に、共創スペース「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」が誕生する。専門領域が異なる人たちが混ざり合い、新規事業やプロジェクトの創出を目指す。

SHIBUYA QWSが最も重要視するコンセプトは、「問い」の創出だ。日常生活から「なぜだろう?」という疑問を見つけ出し、その「問い」を起点に新しいアイディアを生み出す場であるのが、大きな特徴だ。

そのコンセプトをいち早く体感できるイベントが、オープンに先駆けた9月14日、SHIBUYA QWSで開かれた。SHIBUYA QWSが拠点とする「渋谷」をキーワードに、ビジネスパーソンからクリエイター、学生まで、得意分野の異なる参加者が、「問い」を起点に新たなサービスやプロダクトを練り上げる企画だ。

第一部のトークセッションでは、 gumi代表取締役会長・國光宏尚さん、オピニオンメディアmilieu編集長・塩谷舞さん、新規事業支援のAnyProjects 共同ファウンダー・九法崇雄さんが登壇。人気タピオカブランド「Tapista」を手がけたクリエイティブディレクターの辻愛沙子さんも、飛び入り参加した。

第二部のアイディアソンでは、参加者がクリエイティブ視点とビジネス視点を掛け合わせ、新規事業のアイディアをまとめ上げた。熱量高く行われたイベントの様子を、お届けする。

 

執筆・編集=金井明日香、カメラ=後藤渉、デザイン=堤香菜

 

重いテーマこそ“気軽な”アプローチを

── 今日は、イベントの舞台でもある「渋谷」から発信したいアイディアを、皆さんと考えていきたいと思います。まず渋谷と言えば、映画やアニメに登場する日本を代表する街である一方、ハロウィンの「ゴミ問題」といった環境課題も抱えていますよね。

塩谷:私は今、ニューヨークに生活拠点があるのですが、環境への意識には日本との違いを感じますね。たとえば私の住んでいる地域では、ゴミを出さないことを徹底しているエコなショップがあったり、公園に共用のコンポスト(生ゴミを分解して堆肥にする装置)が置いてあったり。

面白いのが、エコな暮らしが「おしゃれ」「かっこいい」という文脈で広まっていること。もちろん真面目な議論も繰り広げられていますが、「環境を意識する人って、かっこいいよね」という空気が、取り組みを浸透させていると感じます。

九法:僕も最近アジア各国を訪れる機会があったんですが、台湾で廃材を使って建物をデザインしている会社に出会ったんです。ゴミを「資源」と捉え直して、環境問題という重いテーマを、クリエイティブに楽しく解決しようとしている。そのアプローチが印象的でしたね。

国ごとの意識の違いも面白いですよね。たとえば日本のカフェでは今も、プラスチックストローがどんどん配られている。台湾では廃止している店が多い一方、韓国のソウルは紙ストローが主流の印象でした。

國光:僕はプラスチックストローだけ悪者扱いされている状況は、そもそも疑問に思っています。紙ストローならいくら使っても良い、というわけではないからね。しかも紙ストローって、飲んでいるうちにグニュっとしてきて、味がまずくない(笑)?

環境を一切汚さずに生活することは、そもそも不可能ですよね。二酸化炭素を出すことと、海にゴミを流すこと、それぞれに違った問題点がある。

だから、なんとなく「プラスチックストローを廃止すれば良い」と決めつけるのではなく、合理的に考えてどの方法がより環境汚染が少ないのか、という視点で議論していくべきだと思っています。

世界へのPR枠を逃している日本

── 國光さんだったら、渋谷ハロウィンのゴミ問題はどう解決しますか?

 

國光:ゴミをより環境に良い方法で処理するなら、渋谷ハロウィンの参加費を徴収したら良いと思います。僕だったら、2年後までに渋谷を「キャッシュレス・オンリー」の街にして、マイクロ課金しやすい仕組みを作る。

ハロウィンには、100万人以上が渋谷に集まると言われているので、街の収益としても大きいですよね。課金と連動して光るストラップを配っておけば、払っていない人も一目瞭然だし。

塩谷:面白いですね!私はハロウィン以外でも、渋谷はやはりお祭りが似合う街だなと思っていて。その中でも年越しは、渋谷を世界にアピールする絶好の機会だと思っているんです。

というのも、ニューヨークは日付変更線の都合で、年明けの順番が他の国と比べて遅いんですよ。だから各国の年越しの様子を、テレビで延々と流しているんです。

ニュージーランド、オーストラリアから始まり、なんと日本を飛ばして台湾の中継(笑)。日本の年越しって、厳かすぎるからスキップされてしまうんです。

もちろん日本の静かな年越しも、素晴らしい文化です。ですが日本のデジタルアートのクオリティは、世界トップクラス。1年の最初に、世界への絶好のPR枠を逃しているのは、やはり勿体無いなと感じます。

若者やクリエイターが多い街である渋谷は、アートの祭典にはもってこいだと思っていて。渋谷で若者が年越しイベントを企画して世界に発信できたら、すごく面白いと思います。

九法:海外の文脈に載せるのではなくて、日本らしさをどう表現するか、という視点も大事ですよね。タイムズスクエアの年越しを真似しても意味がないし、海外から日本に求められているのも、そこではないと思うので。

イベントは11/1のオープンに先立ち、SHIBUYA QWSを会場にして行われた。

「渋谷は◯◯の街」ではつまらない?

── 皆さんは、これからの渋谷をどうしていきたいですか?

 

國光:僕個人としては、尖った人を集めて世界に発信していくには、ある程度の「枠作り」は必要だと思います。たとえばシンガポールは「金融」、シリコンバレーは「テクノロジー」の街だと宣言したからこそ、優秀な人材が集まってきた。

渋谷もそんな風に、「これに共感する人、集まれ!」と打ち出す方が、街として印象付けられるんじゃないかな。

塩谷:私は逆に、「余白としての渋谷」に可能性を感じます。カルチャーって、大人が舞台を用意して、「さあ作りましょう」と生み出せるものではないからです。

むしろ、若者が自分を自由に表現できる。多少の“やんちゃ”には、大人も目をつぶる。渋谷をそんな位置付けの街にできたら、もっと新しいものが生まれてくるのではと思います。

 

── 今日飛び入りで参加してくださっている辻さんは、クリエイター・ビジネスパーソンであり、若者カルチャーの発信者でもあります。これまでのお話を聞いていかがでしたか。

辻:ご紹介ありがとうございます。私は「若者文化」はそもそも、カウンターカルチャーとして生まれるものだと思っています。捉えどころがないこと自体が、特徴なんです。だから、渋谷の街に明確な「枠」を打ち出していくのは、若者文脈だと少し難しいのかなと感じました。

私は女性のエンパワメントにも取り組んでいるのですが、ジェンダーを考えることは、女性やLGBTQのことだけではなく、社会や他者、そして自分自身と向き合うこと。ジェンダー関連の活動をしていると、「日本人は自分と向き合う教育を受ける機会が少ない」と感じることが多いんです。

でも、普段自分を抑え込んで生きているからこそ、自分自身を顧みる特別な時間が必要。そんな背景から、除夜の鐘や「ゆく年くる年」などの「静かな年越し」に代表される、美しき内向的な文化があるのかな、とも感じていて。そんな思想から禅が生まれて、海外の人がそのカルチャーに惹きつけられている。

渋谷で「禅フェス」を開いたら盛り上がるんじゃないかって、お話を聞きながら考えていました(笑)。

渋谷の街が一望できるSHIBUYA QWSからの景色。

九法:禅フェス、いいですね! 僕は新しいものって、カオスの中からしか生まれないと思っています。音楽好きの僕にとって、渋谷はずっと音楽の街でした。

でも渋谷には、スタートアップの経営者もいれば、ギャルもサブカル好きも、クリエイターもいて、人によって渋谷の捉え方が全く違うと思うんです。渋谷が「◯◯の街」と定義できるようになったら、少しつまらない。いろんな人たちが混ざり合うことで、渋谷はもっと稀少でユニークな街になると思いますね。

Part.2 アイディアソン

「渋谷を世界に発信するアイディア」を考案するアイディアソンも、同日に開催された。このアイディアソンでは、「ビジネス」「クリエイティブ」の両サイドから参加者を募集。

渋谷について感じている「問い」「課題意識」を探し出し、ビジネス視点とクリエイティブ視点を掛け合わせることで、問いを解決するサービスやプロダクトを考案した。

「渋谷」のキーワード以外、テーマに制限無し。付箋に案を書き出すチームや、模造紙にまとめるチームなど、自由な手法でアイディアを出し合った。

参加者は、互いの自己紹介を通して自由にチームを編成。渋谷に対する問いをチームごとに洗い出した後、どんな方法で解決できるかディスカッションした。2時間弱でプレゼンテーションに向けて企画をまとめた。

トークセッションに登壇した4人が、審査員も兼任。各チームの中間発表を聞き、収益化の方法や、渋谷ならではの視点の入れ方などを、アドバイスした。

参加者の相談に乗る審査員。

各チームがステージで成果を発表し、個性あふれるアイディアが噴出した。たとえば、「SHIBUYA 0円滞在サービス」という企画。「お金が弊害になり、夢を実現できない人が多いのでは」という問いから出発したという。

そこで、「アイディアは持っているがお金はない」という人が、渋谷に無料で滞在できるサービスを考案。実現方法は、渋谷の仮想通貨「渋谷トークン」を発行し、アイディアとお金を交換する仕組みを作る、というものだ。

そもそも「渋谷の問いが可視化されていないこと」自体を、課題と捉えるチームもあった。考案された企画は、渋谷にスケルトンハウスを設置するというもの。

起業家予備軍やインフルエンサー志望者、ホームレスの人などが、無料で住める透明なスケルトンハウスを提供。その生活をドキュメンタリーとして配信し、リアルな生活・課題を可視化するのだ。

最終発表の様子。

審査員は「企画性」「実現性」「創造性」の3つの観点から、最も優れたチームを選出。「21世紀の渋谷・百鬼夜行」というイベントアイディアが選ばれた。

このチームが抱いていたのは、渋谷の環境への課題意識と、ナイトエコノミー(夜の経済活動)へのポテンシャル。この2つの問いを解決すべく、渋谷ハロウィンで捨てられたゴミが日本のお化けになる和風仮装イベントを考案した。

百鬼夜行の起源として「捨てたゴミが化けて街を練り歩いている」という説があり、豊富な知識をベースにした創造性が評価された。プロジェクションマッピングを使うことで、装飾によるゴミを出さないよう工夫も凝らした。優勝チームには、「SHIBUYA QWS」の無料使用権利(3ヶ月間)が授与された)

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