「自分が、本当に問うべき問いは?」QWSステージ#06キーノートトーク

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3ヶ月に1度開催されるQWSチャレンジメンバーの晴れ舞台「QWSステージ」。QWSステージでは毎回各分野の第一線で活躍する方をゲストを招き、話を伺う「キーノートトーク」を実施しています。

今回のゲストは、京都大学学際融合教育研究推進センター准教授の宮野公樹さん。「問いを問う」というテーマでお話いただきました。以下、いくつかのトピックを紹介します。

問いとは、自分そのもの

皆さん色々なところで口々に『問い』と叫んでいますが、ある種“問いブーム”がきてますよね。それは結構なことですが、そもそも「問う」って営みを根源的なところから考えてみると、「“人生”に活発な問い」と「“思考”に活発な問い」があるかなと思います。

「“人生”に活発な問い」というのは、言うならば「食うこと(食べていくための問い)」となります。

これはとても大事な問いですが、そもそも何のために生きるの?といったように、その「人生」や「食べていくための問い」自体も“思考”から生まれてこざるを得ないわけで、僕は「思考に活発な問い」が、より根本に位置するのではないかと思っています。

今、口々に「問い」と叫ばれているなかで、改善改良や課題解決といった、なんだか自分以外の場所に問題が存在していて、そこに「問い」を持ってしてアクセスをするようなトーンが支配的なわけですが、先のように“思考”に活発な問いのほうがより根本という観点からすると、「問い」とは、自分が「考えていること」そのものであり、そして、考えているのは他の誰でもなく自分自身なので、「問い」とは自分そのものと言いきれるんです。

他人も自分もなくて、全部が自分

乱暴を承知でさらに論を進めるなら、その「自分」すら疑わしい。

実は、自分も他人も区別なく、全部自分だっていうこと、信じられます?
例えば、僕は20年連れ添ってる嫁はんのことは何でも知ってると思ってたけど、実は、もやしナムルが大好物だってつい最近まで知らなかったんですよね。きっと永遠に本当の嫁はんはわからないままでしょう。

皆さんが誰かのことを「この人はこういうやつやな」って思ったとしても、その人が本当にそうかは分からんってことです。初対面だろうが何十年付き合った人だろうが。つまるところ、「あの人はこういう人」と思っているのも自分だから、あの人というものは「自分の内側」に存在するわけであり、ゆえに、他人も自分もなくて全部が自分ってことなんですよね。

自分の底から湧き上がるピュアな「問い」を生きる

みな意見を言ったりアイデアを出したり対話しますよね。そうして何か創造したり解決したりしようとしている。それは当然の営みですが、今日のテーマ「問いを問う」という考え方に則ると、もう一回り深く考えることができます。

それは、その意見やアイデアが発生した根拠こそを注目しようとすることです。単にアイデアや考えの言い合いではなく、なぜそのような考えに至ったのか、と思考を巡らせることで、より本質的な議論になるのです。

「アイデア(何かをしたいという考え)」というのは、おおもとは自分の「観念(仕事観・人生観・社会観・世界観)」から生まれてきていますよね(下図、参照)。その観念の部分の話し合いを怠たると、意見の言い合いになったり、単なるアイデア勝負にとどまりがちで、なかなか本質的な議論になりません。

さらに「問いを問う」の思考は続きますよ。
そしてその「観念」にもまた、何かの根拠や原因から生じているわけで、それは何かというと、「歴史」だと言うことができます。この場合の歴史は広い意味での歴史であり、例えば、生まれた時代通年やその当時の国の状況とか、自分のまわりの環境すべてのことを意味しています。

そして、さらにその「歴史」すら大元を探っていくと、「存在」にいきつきます。つまり、存在してるから何もかもが存在しているってことです。当たり前のことですよね。何も無ければ何も無いんですから(笑)

在るから在る・・・これは、いつの時代でも、どんな場所でも、誰においても、全く変わらないことですよね。恐ろしいほどの当たり前です。だからこそ、この大常識は万民に響きます。絶対に。

今、自分の外にある問題を自分の問題にしている人も多いですけども、自分の存在すらも疑って、それでも何か一歩踏み出そうとするような、「本分」とも言える問いに向き合うとき、それが成功するとかしないとかを超えたところで、きっと我々は我々の人生を生きれるはずです。

 

 

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宮野 公樹

京都大学学際融合教育研究推進センター准教授

宮野 公樹

京都大学学際融合教育研究推進センター准教授

京都大学学際融合教育研究推進センター准教授。学問論、大学論、(かつては金属組織学、ナノテクノロジー)。96年立命館大卒業後、カナダMcMaster大学、立命館大,九州大学を経て2011年より現職。
総長学事補佐、文部科学省学術調査官の業務経験も。現在、国際高等研究所客員研究員も兼任する他、日本イノベーション学会理事。2008年日本金属学会若手論文賞、他多数。
前著「学問からの手紙—時代に流されない思考—」(小学館)は2019年京大生協にて一般書売上第一位。論考「産学連携の形而上学」2020現代思想10月号記載は、朝日新聞論壇委員が選ぶ今月の1冊に選出される。近著「問いの立て方」(ちくま新書)。

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