「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を推進するプログラム「QWSチャレンジ」。2019年11年〜2020年1月の3カ月のチャレンジ期間を通して、プロジェクトチームが抱く“問い”はどのように磨かれ変化していくのでしょうか。今回は、常識も言語も全く異なる地球外の生命体が過ごしやすい環境を整えることで、渋谷のバリアフリーの基準を作ろう、というプロジェクト「Alien in Shibuya 」のヒラタナツキさんに、9つの質問に答えてもらい、QWSチャレンジについて振り返ってもらいました。
編集・ライティング・撮影/渡辺舞子
1.どういうきっかけでSHIBUYA QWSを知りましたか?
もともとQWSコミュニケーターのアルバイトに応募したのがきっかけです。渋谷で週1で面白そうなバイトがあるなと思ってエントリーしたのですが、面接で私のやりたいことを伝えてみると、「コミュニケーターよりも『QWSチャレンジ』というプログラムに応募してみませんか?」と勧められました。
2.『QWSチャレンジ』に応募することを決めた理由はなんでしたか?
「アートが売れない」という問題意識があって、アーティストが活動しやすい場を作りたいという思いからQWSチャレンジに応募しました。
現在、アートは油絵よりも複製できるデータのものが好まれていて、作品が売れずにアートの価値が下がってきています。それゆえに新しいアーティストが出てこない。投資される対象のアートが無くなってきているという現状に、私や仲間のアーティストたちは危機感を感じています。そんな時に「アートとテクノロジーを掛け合わせれば、この問題は解決できるのでは?」と思いついたのがこのプロジェクトを始めるヒントになりました。
3.具体的にどんな活動を行いましたか?
応募の時にプロジェクトが生まれたのでまずは仲間探しをしたのと、プロジェクトの方向性を決めてベースを作りました。出会いでいうと、環世界学の生物学者の釜屋憲彦さんや宇宙コミュニケーターのTOMOさんが仲間になったり、宇宙人というキーワードから宇宙事業の方とも繋がれました。宇宙事業の研究施設に見学に行き、その経験がきっかけで新しい問いも生まれました。
日本には素晴らしい科学やテック技術、哲学があるのに、一般的に知られていません。企業もどうやって活用したらいいのか分からないから助成金が落ちない、という悪循環が日本の課題だと知りました。そして、将来が描けないから学生も科学を学ぶきっかけがない。そのきっかけをつくるにはクリエイティブの力が必要ではないか。科学とクリエイティブという異業種をがっちゃんこして、日本を活性化していくべきだと思いました。
4.実際に参加して、良かったことはなんですか?
活動の途中でスクランブルミーティングやピッチなど発表する場があったのでプロジェクトが進みました。一人でやっているとついダラダラしがちなので、一回区切りがあると今自分がどの位置にいるか再確認できる。おしりを叩かれているような気持ちで臨みました。ちゃんとしたものを見せなければと気合が入って、いい意味でプレッシャーがかかって良かったです。メンターの方々に足蹴にされるかもしれないと不安でしたが、皆さん親身に話を聞いてくれたのも印象的です。
5.自分のプロジェクトがどうして採択されたと思いますか?
やっぱり今渋谷が抱える「多様性をオープンする」という課題とマッチしたのではないでしょうか。あと、「宇宙人」という言葉がフックになったと思います。元々キャッチコピーを書く仕事をしていたので、言葉はすごい重要。人の目を引く一番のポイントはビジュアルイメージですけど、次に大事なのは斬新なくらいのキャッチコピー。一目で惹きつけて、興味を持ってもらえるきっかけを作る「種の元」になる。プロジェクトにコピーライターは1人いた方がいいです。
6.『QWSチャレンジ』にはどんな人が集まっていると思いますか?
「めんどくさいを楽しいに変換」させて活動している人が多い。問いの種を見つけるのって正直めんどくさいですよね。ただ単に流されて生きてる方が楽なのに、わざわざ向き合っていてパワフルだと思うし、問いを流さないで受け止める「心のミット」を持っている人が多い。あと、人を巻き込む力がある人が多いかな。そーゆー普通ではないという意味で変な人が多いなって印象です(笑)。
7.『QWSチャレンジ』を一言でオススメするとしたら、なんと言いますか?その理由は?
営業が苦手な人こそ来た方がいい! 私は営業が苦手なんですけど、QWSチャレンジ期間で自然とたくさんの人に出会いました。QWSは、何かを欲してる人と何かを生み出す人が集まっていて、磁石のように引き合っている空間。時には思いもよらない人からアプローチが来て、予想外の花が咲く可能性を感じました。
あとは、拡散力がある。SNSが莫大な力を持っている時代の中で、埋もれないのは発信力がある人達が集まるから。QWSチャレンジとは「これから森になる場所」というイメージ。これから問いの種がたくさんまかれて、どんどん太い幹が育つだろうなって思ってます。
8.活動する中で「問い」は変化しましたか?
問いは変化というよりは増えました。今まで知らなかったことを知ると、問いがどんどん増えていった。だけど、全ての問いをやろうと思うと育たないので、どれかを選ぶ力が必要だなと実感。私は、科学とクリエイティブで”知ることをワクワクさせる”という新しい問いが出てきました。
変化といえば、プロジェクトに集中して取り組むために昨年末に仕事を辞めちゃいました。仕事を辞めたことが自分にとっていい新陳代謝に。まだ未知数だけど、可能性がある活動ができているので人生が面白くなってきたぞって楽しんでます。
9.『QWSチャレンジ』を経て、これから社会に起こしたいムーブメントはありますか?
教育の現場や個人が「勉強が楽しい」と感じる、勉強が勉強じゃなくなる日が来るのが目標です。私は学生時代に勉強が大嫌いだったんですが、最近出会った科学者の人達が力学や生物学を楽しそうに話す姿を見て「なんでだろう」って疑問に思ったんです。その人達から紹介された本を読んで知識をつけるとたしかに面白くて、なぜ楽しそうだったのかがわかりました。そうしたらどんどん読書量が増えていって、理系の人と話ができるレベルまで知識を得ていました。その時に「いつの間にか私、勉強してたんだ」って気付いたんです。そうゆう風に、「知るって楽しいんだ」「夢中になったら勉強してた」ということを、科学とクリエイティブを融合することで伝えていきたいです。
ヒラタナツキ
ヒラタナツキ
代表作は裏渋谷のFlamingo cafeなど。ジャンルは内装から撮影、企画、ジュエリーまで多岐にわたる。ハイテクとアートを組み合わせた表現方法を日々模索。藤巻百貨店や宇田川カフェなどのクリエイティブも担当している。
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