問いを放ち、変化を待つ。AI時代に求められる「クエスチョンプレナー」の輪郭を探る

  • #Questionpreneur

誰もが正解らしき答えをすぐに出せる時代。だからこそ本当に必要なのは、目の前の「当たり前」への違和感をスルーしないことかもしれません。

 

「同い年なのに、なんでこんなに生き方が違うんだろう?」——高校を中退してギャルになった一人の女性が抱いたこの違和感は、やがて大企業の会議室にまで届く大きな「渦」になっていきました。

 

7年目に入ったSHIBUYAQWSは、こうして問いを起点に新しい価値を生み出す人材像を、新概念「Questionpreneur(クエスチョンプレナー)」として提唱しています。とはいえ、その輪郭はまだ探っている最中。

 

そこで今回は、QWSを拠点に「ギャル式ブレスト®」で企業の忖度文化に一石を投じてきたCGOドットコム代表・バブリーさんを迎え、SHIBUYA QWSディレクターの磯辺とともにそのリアルな輪郭を探りました。

バブリー(竹野理香子)

株式会社CGOドットコム

バブリー(竹野理香子)

株式会社CGOドットコム

CGOドットコムは、「世の中のバイブスをアゲる↑」をミッションに掲げ、「誰もが自分らしく働くことができる社会の実現」を目指し、忖度なしのフラットな対話を武器に、企業の組織課題解決や人材開発に伴走しています。

原体験と「世の中の評価基準」という問い

——今日は「Questionpreneur(クエスチョンプレナー)」という新しい概念について、バブリーさんと一緒に輪郭を探っていきたいんです。これは「クエスチョン(問い)」と「アントレプレナー(起業家)」を掛け合わせた造語で、ざっくり言うと「問いを起点に周囲を巻き込み、新しい価値を生み出す人」。とはいえ、その在り方はまだQWSも探っている最中で。だからこそ、バブリーさんの実感から一緒に考えられたらと思っています。

 

バブリー:おお、いいですね。ぜひお願いします!

 

——さっそくですが、バブリーさんがQWSで掲げているのは「ギャルマインドは世の中をアゲ↑にできるのか⁈」という問いです。でもこれって、純粋な問いというより「私はこれを信じている!」という標語に近かった気もしていて。活動を始めた当初、本当は何を「問うて」いたんでしょう?

 

バブリー:うーん……何を探っていたんだろう。でも私、元々起業したかったわけでもなくて。当時は単純に、世の中に石を投げたかったんだと思います。高校を中退してギャルになって、人生が変わって。当時のギャルの子たちって、親を継いで水商売をやります、みたいな子が多かったんです。一方で私は「自由だから何でもしていいよ」と言われる環境で。同い年なのにこんなに生き方が違うんだって、世の中って不平等だなって感じていて。

 

その時に「世の中の評価基準を決めてる人って誰なんだろう?」って強く疑問に思ったんです。今って1から10までの尺度しかないけど、その尺度をもう少し広げられれば、ギャルを評価できる人が増えるんじゃないかって。ギャルを社会に合わせるんじゃなくて、世の中の価値観のほうを変えたい。それが当時いちばん強く思っていたことでした。

 

——なるほど、その強烈な違和感が最初の「問い」だったんですね。

 

バブリー:まさにそうです。じゃあ、今の世の中の決定や評価をしている人たちは誰なのかと見渡したら、内閣を見ても、大企業の役員ページを見ても、同じようなおじさんたちがずらっと並んでいて。「これ、何の違いがあるんだろう?」って、間違い探しみたいに思っちゃったんです(笑)。そこに一石を投じたくて。だから、大企業の会議、まさにスーツを着たおじさんたちが集まっているような会議にギャルが入ることで、彼らの思考に影響を与えて、「こういう世の中でもあってもいいよね」というメッセージを外に発信したかった。それが最初でした。その軸は今もあんまり変わっていないかもしれないですね。

 

——なるほど。価値基準を変えるにはどうすればいいかをぐるぐると考えて、ご自身を救ってくれたギャルマインドを掛け合わせて、「ギャル式ブレスト®」というアプローチに行き着いたんですね。

 

バブリー:そうそう、そうなんです。

 

——Questionpreneurの概念において、世の中の大きな流れを「川」に見立てているんです。そこに「そもそも」「なんで?」という問いの石をポンと置くと、石の裏で流れが変わって、やがて周りを巻き込む「渦」が生まれていく。バブリーさんが感じた不平等への違和感も、まさにその最初の一石だったんだなと。

 

バブリー:あー、たしかに。そんな感覚だったかも。

 

「問い」ではなく「渦」で周囲を巻き込む

——その最初の一石から、バブリーさんは今、たくさんの企業や仲間を巻き込んでいますよね。QWSでは、いい問いを「思わず考えてみたくなるもの」だと考えているんですが、バブリーさんの根源的な問い自体は、直接みんなに投げかけたわけではないですよね。それでも今、CGOドットコムには50人もの仲間がいて、多くの企業が巻き込まれている。これだけの人を引きつけているのは、どんな理由だと思いますか?

 

バブリー:直感的に思うのは、問いを投げること自体は結構誰でもやると思うんです。私はそれよりも、渦を作って現実を変えていくことの方がより重要だと考えていて。最初は「ギャルが会議に入って組織を変えるんです」という夢物語をあちこちで語って回りましたが、当時は誰も信じてくれませんでしたし、フォロワーも超少なかったんです。でも、そこから1個ずつ、実際の現場に入って、「なんかこの子、本当にやるかも」「バブリーならやってくれるっしょ」みたいな実績を作っていって。それが、みんなが惹きつけられて来てくれたいちばんの理由だったのかなって。問いそのものが特別だったわけじゃなくて。

 

——なるほど。問いを投げる人が、全部を一人で作り切る必要はないのかもしれませんね。バブリーさんの場合は、問いをかたちにして一つひとつ見てもらったことで、周りが自然と巻き込まれていった。

 

バブリー:そうです。だからこそ、みんながその渦に巻き込まれてくれたんだと思います。

 

——QWSでは、問いはプロジェクトのフェーズに合わせてどんどん変化し、アップデートしていいものだと考えています。仮説検証を繰り返すように、この5年間の活動を振り返って、バブリーさんの中の「問いたいもの」はどう変化していきましたか?

 

バブリー:最初は、世の中のマジョリティに対して中指立ててた、みたいな(笑)。当時は「ギャルは絶滅した」と言われていたので、最初の問いは「令和にギャルはいるのか?」でした。でも活動していくうちに、ギャルはちゃんといることが分かって、答えが出たんです。

 

じゃあ次はどうするかと考えて、「ギャルマインドをビジネスシーンにインストールするには?」という問いにアップデートしました。それも企業様とブレストを重ねる中で「あ、できた」と確信できた。だから今はもう一つ先の、「世の中のバイブスをどうアゲていくか」というもっと大きなテーマに向き合っているところです。

 

——問いを立てて、答えを出して、さらに大きな問いへとアップデートしていく。まさに見本のようなサイクルですね。ちなみにQuestionpreneurの概念では、問いを投げたあとにあえて立ち止まって、答えが出ないまま楽しんでみる「創造的待機」という感覚も大事にしているんです。バブリーさんには、そういう感覚ってありましたか?

 

バブリー:私、結構楽しんでいたかもしれないです。会議に入ってどうなるかについて、最初は効果を全く約束していなくて、「どう感じるか」の方が大事だと思ってたので。「逆にどう思いますかね? やってみましょうか」というスタンスで、企業側に考えてもらっていた時期がありました。あとは、取り組みが初めてバズった時、ネット上でネガティブな言葉をたくさん言われたんですけど、逆にワクワクしたんです。「世の中ってまだ変わってないな。だとしたら、自分たちが開拓していくニーズが間違いなくあるな」と思えて、めっちゃうれしかったんですよね。

 

メインストリーム化する中での葛藤と「次の一石」

——逆に最近はどうですか? あえて立ち止まるとか、その感覚ってありますか?

 

バブリー:最近はないですね。立ち止まれていないから良くないなって、ちょっと思っています。ある意味で拡大フェーズに入って、事業を線にしていく段階なんですが、「ギャル式ブレスト®ってすごいね」「ギャルって変化を起こすよね」と褒められることが増えて。でも「本当にそうなのかな?」「ギャルが神格化されすぎているんじゃないか?」と思ったりもして。これからの5年を考える新しい問いを、自分の中で立てないといけないなと強く感じています。

 

——事業が拡大フェーズに入っていく中で、「このままでいいのかな」というモヤモヤは、具体的にどういうシーンで感じますか?

 

バブリー:Yahoo!ニュースのコメント欄で私たちの取り組みがすごく褒められていたんですけど、それがぶっちゃけ、すごく違和感があったんです。「え、そんなにすんなり受け入れられちゃうの?」って。批判が多いほうがうれしいからかもしれませんが、「私たちがやっていることは、もはや新しいものではないのかもしれない」と思ってしまったんです。みんなが「そうだね」と納得できるものを作ってしまった。スタートアップとして新しいものを作りたい人間からすると、このままでいいのかという焦りがありました。

 

——戸惑ってしまった時、「じゃあ次はこれなんじゃないか」という新しい仮説はあったりするんですか?

 

バブリー:それがないんですよね。だから今、すごく悩んでしまっていて。一旦は既存事業を拡大させていくのを経営者としてやらなきゃいけないんですけど……。さっき言ってもらったQuestionpreneurという視点で自分を見ると、今の活動内容のままでいいのかなって分からなくなっちゃって。経営者としての役割と、新しい問いを立てることの間で、なんだかズレが生じている気がするんです。経営しててズレるなと。

 

——でも逆に、それを「やらなきゃな」と内省する感覚になっている時点で、「創造的待機」の重要性をちゃんと感じてくれていると思います。

 

バブリー:確かに、今はまさに待機なのかも知れないですね。1回石を投げて、5年ぐらいで世の中の川の流れが本当に変わるんだなって実感しました。でも、その次に新しい石を投げるのって、めっちゃ体力が要るんです。自分が作ってきた川の流れに対して、もう一度自分で石を投げて流れを変えるのって、めちゃくちゃ苦しくて。どうしよう、というのが今の正直な悩みです。

 

——ギャルがある意味メインストリームに来ちゃったから、それをもう1回カウンターカルチャーにするには、みたいな話ですよね。

 

バブリー:そう! 逆張りを自分たちで作るにはどうすればいいのか、そこが苦しいなって思いました。

 

——なるほど。でも、その葛藤こそがまさに「問い」と「プロトタイプ」のすごい往復運動なんだと思います。バブリーさんにとってこの5年が一区切りで、ある意味で答えが半分出た状態だとしたら、次の5年に向けた新しい問いを、また私たちQWSと一緒に考えていけたらうれしいです。CGOの仲間もQWSのメンバーもたくさんいるので、ぜひみんなで一緒に問い続けていきましょう。

 

バブリー:次の5年に向けてですね! 自分でも問いをちゃんと考える時間が欲しかったので、すごく頭が整理されました。

 

——最後に、今日ここまでのお話を受けてバブリーさんの考えるQuestionpreneurはどういう存在だと考えましたか?

 

バブリー:「自分で作った川の流れにも違和感を持ち、『次の一石』をブチ込み続けられる人」だと思います。

 

1回石を投げて渦を作って、世の中を変える。でもそこで満足せず、自分がメインストリームになったとしても「いや、まだもっと面白い世界があるっしょ」って立ち止まって次の問いを探せる人。

経営のリアルな苦しさと向き合いながらも、次のステップを楽しめる存在でありたいです。

 

聞き手:磯辺陽介
執筆:船寄洋之
編集:越本春香
撮影:村上大輔

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