学生の殻を捨てた大きな決断。 システムから自社運行へ、 医療・福祉の新たな「移動インフラ」への挑戦

  • #QWSチャレンジ

「誰もが行きたい場所へ移動できたら、どんな世界になる?」を問いに掲げ、大型の資金調達など急成長中のmairuプロジェクト大村さん。

2025年度中に活躍したQWSプロジェクトとしてインタビューをしました。プロジェクトのあゆみを振り返りながら、ブレイクスルーしたきっかけ、ターニングポイント等について伺っていきます。

システムから現場を担う運行事業者へ。真のインフラへの決断

大村 慧(以下、大村):移動は人生を豊かにし、健康を保つ上で必要不可欠なものです。しかし、自力での移動が難しい方にとって、それは決して当たり前ではありません。その解決に向けて、私たちは当初、民間救急等の検索・予約システム「mairu」を開発し、事業者に1件ずつ電話をかけて空きを確認しなければならなかった利用者側の煩雑な手配の負担軽減に取り組みました。 

ただ、手配の効率化は進んだものの、真の移動インフラになるには、単なるウェブ上のマッチングだけでなく、オペレーションを規格化し、システムと密接につながる搬送サービスそのものを自らつくり、その運営に責任を持つ必要があると痛感したんです。社内で激論を交わした末、ITシステムの提供にとどまらず、自ら車両と専門クルーを抱えて搬送事業そのものを運営するという、この1年で最もハードで大きな転換となる決断を下しました。 そうして誕生したのが、自社で搬送オペレーションを担う「mairu mobility」です。医療・介護の資格を持つ専門クルーと専用車両を配備し、事業者ごとにバラバラだった支援レベルや料金といった業界課題を解消。一律の明朗な料金体系と高い安全基準により、誰もが安心して利用できる体制を構築しました。

車両1台から飛躍した1年。現場の声で確信したサービスの価値

大村:「mairu mobility」を始めたこの1年は、事業としても組織としても大きく成長した期間でした。前半はオフィスや車両の確保に奔走し、後半はとにかく現場のオペレーションを固める毎日。最初はわずか1台からのスタートでした。運用予定だった車両が盗まれたという、心が折れそうなトラブルもありましたが、それでも泥臭く前に進み続け、徐々に台数を増やして今では10台、今年度中には30台を目指しています。

実際に運行を始めると、個人の通院利用や病院からの手配など、多様なニーズがあることが見えてきました。特に印象的だったのは、「寝たきりの状態でも、東京から地元へ帰り、自分らしい時間を過ごしたい」という患者さんの声を受け、数百キロの長距離搬送を実現したことです。無事にお送りし、クルーが直接「帰れてよかった」という言葉をいただいたとき、自分たちのやっていることは本当に必要なんだと強く実感しました。

 

「異様なほど高い評判」。熱量の高い議論を受け止めるQWS

大村:活動拠点としてQWSを選んだのは、起業家からのレピュテーション(評判)が異様なほど高かったから。毎日ワークスペースに入り浸って作業をしていることが、自然と周りのコミュニティへとつながっていく環境が、当時の私たちの性に合っていました。当初は3カ月に1回QWSのステージで発表する機会があり、それが事業を進めるための定期的な進捗管理になっていましたね。

入会して最も印象的だったのは、QWSチャレンジで採択していただいたメンターの太田雄貴さんとの出会いです。最初の面談から、市場性やビジネスの実現性について、深く鋭く切り込まれ、事業に真っ正面から向き合っていただきました。その後もエンジェル投資家となり、他の応援者となる方々を紹介していただくなど、横の繋がりでも手厚くサポートしていただいています。 

事業が本格化していく過程は、「学生という殻をちゃんと捨て、社会人として仕事をしよう」と組織の基準を引き上げた時期でもありました。私たちは誰が本当のコアメンバーとして、この先の事業に責任を持つのか、閉館ギリギリまで叫ぶように本音でぶつかり合うミーティングを重ねました。mairuは一切妥協せずに意見を戦わせるチームなのですが、こうした熱量の高い議論を許容し、受け止めてくれるQWSという土壌があったからこそ、今の強い組織体制を築くことができたと感じています。

 

圧倒的な供給不足に立ち向かう。陸・海・空を繋ぐ移動基盤へ

大村:事業を進めていくうちに明確になったのは、解決すべきは需要ではなく「供給」の問題だということ。高齢化の進展とそれに伴う地域医療の推進に起因する圧倒的な供給不足に立ち向かうため、ひたすらにサービスの拡大・企画化・効率化を突き詰めていくしかありません。だからこそ、QWSのコミュニティも活かして、インフラ構築に向けた具体的な共創をさらに仕掛けたいと考えています。例えば、物流倉庫や広大な駐車場といった豊富な施設・設備を持つ企業との連携や、高齢者介護施設の開発にモビリティの観点から参画するなど、都市インフラのアップデートを見据えてやれることは山ほどあります。

ゆくゆくは陸上にとどまらず、ドクターヘリ等の空や海の移動手段とも組み合わせ、あらゆる領域の移動ニーズに応えていきたい。それが私達の夢です。自力での移動が難しい方も含め、誰もが当たり前に移動できる社会。そのインフラをこれからも全力で創り上げていきます。

大村 慧

株式会社mairu tech

大村 慧

株式会社mairu tech

QWSでの活動プロジェクト名:mairu 〜予約したい福祉タクシー・民間救急がすぐに見つかるシステム〜

株式会社mairu techは、自力での移動が難しい方の移動の可能性を広げ、命と人生の豊かさを支える新しい移動インフラの形を追求しています。患者や家族の手配の負担を解消するシステム「mairu」の提供に加え、専門クルーと専用車両による確実な搬送サービス「mairu mobility」を展開し、誰もが安心して移動できる環境の実現を目指しています。

この記事は「SHIBUYA QWS Annual Report 2025-2026」に掲載されています。

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