「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を推進するプログラム「QWSチャレンジ」。2019年11 月〜2020年1月の3カ月のチャレンジ期間を通して、プロジェクトチームが抱く“問い”はどのように磨かれ変化していくのでしょうか。今回は、設計者が素材再利用を前提としたプロダクト開発を通じて、設計手法開発・可能性の提示を行うプロジェクト「Plastic Native 」の浅井睦さんに、9つの質問に答えてもらい、QWSチャレンジについて振り返ってもらいました。
編集・ライティング・撮影=渡辺舞子
1.どういうきっかけでSHIBUYA QWSを知りましたか?
QWSは知り合いから教えてもらいました。そのあとに、ロフトワークのスタッフがSNSで『QWSチャレンジ』についてシェアしているのを見て、「こんなのがあるんだ」と興味を持ちました。
2.『QWSチャレンジ』に応募することを決めた理由はなんでしたか?
昨年の8月に開催されたメーカーフェアに出展した後に次の目標を探していた時、QWSチャレンジの存在を知りました。もともと、自分が作ったプロダクトの分解・再構築プロセスのための機材を、東京大学生産技術研究所と掛け合わせたら面白いんじゃないかと思っていたんですが、QWSチャレンジの審査員を見ると研究者の野城智也先生の名前が!「これは運命!」と思って野城先生へ向けてラブレターのつもりでエントリーシートを書きました。
3.具体的にどんな活動を行いましたか?
野城先生のデザインラボに訪問し、刺激を受けました。ラボで行っているプロセスを見て、東大発のイノベーション教育プログラム「i.school」のワークショップメソッドを思い出し、これは独自で取り入れるべきだな思いました。今は、機材を使って出てきたアウトプットをちゃんと形することと、そのプロセスをまとめています。野城先生も言ってたのですが、モノを通して受けるフィードバックって大切です。
あとは、昨年12月にイベントを主催しました。「ありうるかも知れない世界」と題し、参加者皆さんに200年後に飛んでもらうというワークショップを実施したのですが、最後に参加者が書いたアイディアが壁一面に広がったときは感動しました。
4.実際に参加して、良かったことはなんですか?
3カ月という期間があることがいい。プロジェクトを進める上で一つの道しるべになりました。そして一番良かったのは、一人で活動していても仕方ないなって気付けたこと。一人で実験して、結果出しても、誰も共感してくれたなかったら意味がないし。僕が描いていたのは、サプライチェーンをどう変えていくかが肝だったので、一人ではできない。それに気付けたのは大きいです。
5.自分のプロジェクトがどうして採択されたと思いますか?
僕のラブレターが野城先生に刺さったとしか言いようがないですね(笑)。東大に行って野城先生と話してみたかったし、研究室にも行ってみたかった。先生にしかわからないであろう言語で語りかけたから、他の審査員から見たら異質だったかも。採択される未来を想像して、勝手に可能性を感じてました。受かってよかったです。
6.『QWSチャレンジ』にはどんな人が集まっていると思いますか?
お金になることをしている人が少ない(笑)。みんな他に仕事を持っているんだけど、真意に表現できる場を求めている人が多いイメージです。研究とアートなど専門分野はそれぞれだけれど、究極的に自分がやりたいことをしてる人が集まっている。やりたいことをやるためにQWSチャレンジに参加しているんだと思います。
7.『QWSチャレンジ』を一言でオススメするとしたら、なんと言いますか?その理由は?
エントリーするときに自分の考えを整理してまとめる事ってとても大事。プロジェクトの中でのミニマムなアウトプット作業だと思うんです。それがうまくまとめられなかったらもう一度考えた方がいい。「挑戦していいよ」っていう場が開かれているのだったら、せっかくだからやってみたら?と言いたいです。
8.活動する中で「問い」は変化しましたか?
このプロジェクトを始めた当初は、循環型プロダクトをどうやって作るかと考えていたけど、今は世の中に新しい考え方を受け入れる土壌を創るにはどうしたらいいかと考えてます。モノやコトを考えていく上での、選択肢を増やしたい。選ぶ自由があるのは豊かなことだと思っているので、生きてく上でこのプロダクトを選んでくれたらいいですね。
9.『QWSチャレンジ』を経て、これから社会に起こしたいムーブメントはありますか?
今後僕らが提案するデザインメソッドが、誰かのインスピレーションを刺激して、発想のきっかけになればと思っています。今まで偉大な先人たちが切り拓いた方法やルールは、その当時は非常に使いやすいモノだったかもしれませんが、時代の流れと共に少しずつ合わなくなってしまっていることがたくさんあるかと思います。そうやって受け継がれている方法やルールが、モノやコトを考える時のネックになっている場合があります。
せっかく自由な発想が受け入れられる時代なので、とりあえず好きなようにやってみる。例え失敗しても、本質がわかればいい。そうやって新しい方法や選択肢が増えていって、モノやコトを考えやすい世の中になると、僕自身も嬉しいです。
浅井睦
浅井睦
Plastic Native 主宰。フリーランスハードウェア設計士として活動する傍ら既存の生産技術をベースとしない設計手法を独自に開発中であり、機能検証のためのプロダクト開発・環境設計を研究中。2020年2月からアイルランドに留学。
今期QWSチャレンジに採択されたプロジェクトはこちらのページで紹介中
チャレンジプロジェクト