SHIBUYA QWSでは日々、多様な個性と可能性が交差し、飛び交っています。プロジェクトが活動をしていく中で生まれたアイデアが、QWSでの出会いをきっかけに芽吹き、実現することも少なくありません。今回は、「ギャルマインドをビジネスにインストールするには?」という問いのもと活動をしているバブリースクールと、QWSコーポレートメンバーである三菱鉛筆とが一緒に会議をした「ギャル式ブレスト」を行うまでの軌跡と、見出した可能性について掘り下げていきます。
編集・テキスト=渡辺舞子
出会うはずがなかった人間が交わるまで
5月29日、QWS休館の最中に興味深いブレインストーミングが開催されました。その名も「ギャル式ブレスト」。QWSチャレンジ2期生である「バブリースクール」が考案したもので、ギャルの企画力やアイデア領域がビジネスシーンで活躍するのでは、という仮説をもとに実装実験するために誕生したブレストです。くだけた説明を用いると、企業の会議にギャルが一緒に出席し、ぶっちゃけた意見を出したり、フランクな空気づくりをしてくれるというもの。発想自体がすでに面白そうですが、このギャル式ブレストをやってみたい! と手を上げたのが、QWSコーポレートメンバーの三菱鉛筆でした。
バブリースクールと三菱鉛筆を引き合わせるきっかけになったのは、QWSコミュニティマネージャーの星川和也さん。「バブリースクール代表のバブリーさんから『企業とギャル式ブレストをしてみたい』と相談を受けました。その時にパッと浮かんだのが三菱鉛筆の中島徹さんの顔。もともと三菱鉛筆のQWSに対して求めているものが“社内にはない新しい出会い”だったので、ぴったりだなと思いました」。
中島さんにギャル式ブレストを持ちかけられた時の感想を聞くと、「確かに突飛なことを言いそうだけど、なぜギャル?というのが率直な気持ちでした」と若干戸惑いはあったと言います。しかし、QWS会員内で議論が活性化されるかを検証するのにいい機会と考え、ブレストを承諾。
星川さんがバブリーさんと中島さんを引き合わせて、ギャル式ブレストが実施する運びになりました
ぶっちゃけられる仕組みをイチから作り直す
三菱鉛筆とのギャル式ブレストを迎える前に、バブリーさんは対策を練ったと言います。「メインホストをしてもらうギャルサークル『Black Diamond from 2000』主催のあおちゃんぺさんからフィードバックをいただき、ブレストの時間、人数、タイムライン、ファシリテーション方法など根本から見直しました。また当初、ギャル式ブレストはオフラインでの実施を想定していましたが、社会情勢を鑑み、オンラインでの実施を余儀なくされました。よって”オンラインでギャルの温度感を伝えるには?”についてはチームで何度も話し合いを行いました」。
きたる三菱鉛筆とのブレストに向けオンラインでも対応できる形へアップデートしていったのです。
ブレストの準備は万全とはいえ、プレッシャーも大きかったそう。「三菱鉛筆さんといえば、誰もが知っている大企業。正直ブチ切れられたらどうしよう、盛り上がらなかったらどうしようなどと不安はありました」とバブリーさん。
しかし、不安を抱いていたのは三菱鉛筆側も同じでした。ブレストが始まる前に「ギャルの子と話したことないからちょっと怖い」と話している参加者もいて、お互い緊張しながら当日を迎えることとなりました。
「筆記具ってエモい」名言が飛び交うオンラインブレスト
今回、ブレストを行うにあたって三菱鉛筆が「筆記具以外の書く、描くってなんだろう」という問いを提案。この問いについて、Black Diamond from 2000のギャルと三菱鉛筆、QWS会員と事務局のメンバーが語り合いました。
ブレスト中は「敬語禁止」、「あだ名で呼び合う」というルールを設け、障壁なく話しやすい雰囲気を徹底。初めは緊張していた面持ちでしたが徐々に砕けてゆき、結果「筆記具ってエモい」「お墓をデコれたらおもしろそう」「ペン自体が歳をとるのよくない?」といった普通の会議ではありえないような斬新な発想がたくさん生まれました。
中島さんに特に印象に残ったフレーズについて聞くと、
「”結論、全てエモいに繋がる”は印象深い言葉でした。描き味などの機能に訴求するだけではなく、ユーザーの感性や感情に訴えるような情緒的な訴求も必要と感じました」。
さらに、ギャルならではの核心をつく言葉も印象に残ったと言います。
「”上司にそうですねと言わないといけない打ち合わせは意味が無い”と言われた時にはドキリとしました。商品や事業を考える上で顧客が重要なはずなのに、いつのまにか顧客が上司になってしまってないかと、考えさせられる言葉でした。ギャル式ブレストと普段の会議を比べてみて、敬語がコミュニケーションの壁になっていたり、ちゃんとした意見を言わないといけないという空気感も強いのだろうということも実感しました。また、突飛な意見であってもそれがアイデアに繋がる可能性もあるので、一見、無駄な話であっても活かし方次第で価値あるものになるのだと気づかされました」。
バブリーさんは、ブレスト終了後に参加者がみんな笑顔になっているのを見て「これが見たかった景色だ!」と喜びを感じたと言います。
「ギャル式ブレストの根幹である“ギャルがぶっちゃけた意見をくれます、ぶっちゃけられる環境を作ります”の効果が発揮されたことは非常に大きな収穫でした。今後の課題としては、ブレストで出たアイデアが、そのままで止まってしまうことが挙げられました。今後アイディエーションだけでなく、企画やプロモーションまでも行っていきたいと考えています。ですので、出たアイデアを翻訳し、形にする作業までできるような体制と仕組みを整えていく予定です」。
自分の問いが誰かの問いを救う起爆剤に
最後に中島さんにギャル式ブレストはどんな企業におすすめかを問うと、「縦社会の厳しさに悩んでいる企業」との答え。「そういった企業で無理やり開催するのは良い”起爆剤”になると思いました」。実際、三菱鉛筆の社長の数原滋彦さんも参加していましたが、ブレスト中は役職関係なくみんなが“ため口”で会話。緊張感がありながらも、ギャルという会社とは関係のない中立な立場の人間がいることが、「意見を批判されない」という自由に発言できる空気感作りに作用しているように思えました。
企業の中で新しいことを生み出すのは時に孤独感を味わうことがあります。アイデアのマンネリ化や発言者の偏りなどはどの会社も抱いている課題。「誰かの意見を聞いてみたい!」という時に、思い切ってギャルの力を借りてみるという未来も近いかもしれません。
バブリーさんに今後の展望について聞くと「渋谷区長とブレストをやりたい!」と即答。「ギャル式ブレストで生まれたモノが渋谷に溢れるのが夢。そのためには、”ギャル式ブレストの導入=イケてる”というようなブランディングをしていきたいです」。
雑談がきっかけで生まれた今回のコラボレーション。プロジェクトが抱える問いが活動していく過程で研磨され、形になり、何かのきっかけで爆発するという、QWSが理想とする問いが進化していく過程を目撃できました。これからもQWSでは、誰かの問いと問いが出会い、磨かれ、放たれるまでを共創し、未知の価値の土壌を豊かにしていきたいと考えています。
【取材協力】
・三菱鉛筆株式会社
https://www.mpuni.co.jp/
・バブリースクールが手掛けるメディア「ギャルペディア」
http://galpedia.com/