「SHIBUYA QWSは未来の大学?」あたりまえをアップデートする、個人の想いがつくる価値

QWSチャレンジ

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2019年11月1日にオープンを迎えたSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)。
その中心となる、「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を支援する『QWSチャレンジ』は、通年でプロジェクトの募集を行なっています。

9月6日に行われた事前説明会では、50名以上の方々にご参加いただき、これからのQWS、渋谷という街、そして社会の可能性を探る熱気あるセッションとなりました。

『QWSチャレンジ』へ応募を考えているみなさまへ、どんなメンバーがどんな想いでQWSをつくっているのか、また採択されたチームにはどんな未来が待っているのか、応募の参考にしてもらいたく、QWS事務局の目線で事前説明会の模様をお伝えします。

テキスト=永谷聡基 写真=森川敏

QWSチャレンジとは?

「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を支援するプログラム。公募によって採択されたチームは、渋谷駅直結のプロジェクトスペースが無料で利用可能です。自らの感性に基づいた自発的な[問い]を持ち、多様なプレイヤーを巻き込みながら進めることができる内容であれば、分野や規模に制限はありません。未完成歓迎です。

渋谷駅直結のプロジェクトスペースが無料で利用できる!……だけではない?

まずは事務局から、SHIBUYA QWSの施設概要と、『QWSチャレンジ』が何を目指しているのか?を共有しました。

採択されたプロジェクトチームには、大きく以下の3つの支援内容を提供します。

1. プロジェクトスペースの無料利用(3ヶ月間)
2. Scramble Societyの多様なネットワーク
3. 『QWSステージ』での発表の場

プロジェクトスペースの無料利用期間は3ヶ月間。
たった3ヶ月と思うか、可能性を秘めた3ヶ月と思うかはプロジェクトチーム次第。

大学を始めとし、スタートアップや社会起業コミュニティ、アートNPOや法律事務所など、領域を越えた様々なパートナーと提携しているSHIBUYA QWS。『QWSチャレンジ』では、限られた期間でも何らかのアウトプットを目指し、「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を支援します。

また、プロジェクトの採択を行うのは、連携先である大学含め、領域を越えて活躍しているリーディングプレイヤーの面々。

事前説明会では、『QWSチャレンジ』のプロジェクト審査員でもある慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授 南澤孝太さん、NPO法人スローレーベルのディレクターや東京2020の開会式・閉会式のクリエイティブディレクターを務める栗栖良依さん、株式会社ロフトワーク代表 林千晶さんを交えて、トークセッションを行いました。

個人の想いが、世界をつくる?

トークセッションでは、以下の4つの質問をトークテーマに進めました。

1. なぜSHIBUYA QWSをつくるんですか?
2. どうして大学はQWSと連携するんですか?
3. どんなプロジェクトに応募してほしいですか?
4. QWSでどんな価値が生まれてほしいと思いますか?

来場者も交えて会場一体となり、質問に対するそれぞれの考えを書いてみるところから、トークセッションは始まります。

トークの皮切りは、SHIBUYA QWSのディレクターを務める野村から。
「なぜSHIBUYA QWSをつくるんですか?」という質問に対して、「好奇心あふれる世界を実現したい、と思ったんです」と自らの想いを語ります。

「世の中の課題が複雑化してしまって、一つのスタートアップを生み出すだけでは対応できない時代になっていると思うんです。世界がより良くなるためには、好奇心こそ大切ではないか?一人一人が好奇心を持って、思いっきりチャレンジできる場所を本気でつくりたいと思ったことが、QWSをつくるきっかけでした」

右端でマイクを持つのが、渋谷キューズ ディレクター野村

また慶應義塾大学の南澤さんは、QWSの立ち上げ当初に野村からこの話を聞いて、「不動産の人でこんなことを考えてくれている人がいるんだと、感動した」と言います。

「これから想像する未来って、人によって違うと思うんです。昔だったら、食料が手に入ればそれでハッピー、みたいな人類共通の目標があったかもしれませんが、今はどんどん多様化している」

「もう新しいものって、一人一人の想いからしか生まれない時代になっている気がします。個人の想いをドライブさせる場所があって、初めて未来が生まれるんじゃないか?そんなことを考えている時に、ちょうど野村さんの話を聞いたんです」

右から慶應義塾大学 南澤さん、SHIBUYA QWSの空間コンセプトをつくってきたロフトワーク松井さん、NPO法人スローレーベルのディレクターや東京2020の開会式・閉会式のクリエイティブディレクターを務める栗栖さん

ロフトワークの林さんは、重ねてこうも話します。
「“渋谷から世界へ問いかける、可能性の交差点”という施設のコンセプトが、QWSでは本当に大切だと思っている。QWSに関わる人は世界を目指してほしいし、世界の人も、東京に来たらQWSに寄ろう。そんなふうに思ってもらえる場所になってほしい」

NPO法人スローレーベルディレクターの栗栖さんは、QWSのコンセプトができてきた後に『QWSチャレンジ』のプロジェクト採択員として参画しました。「ここにいる登壇者の中で一番新しく加わったメンバーだと思うのですが、私は自分とは違う視点や価値観の人に出会うために、QWSを使いたい」と言います。

「私は2010年に病気をして右足に障害を持ちました。それまではよく渋谷に通っていたんですけど、車で移動するようになったら、渋谷が一気に遠い街になってしまったんです」

「でも多分私だけじゃなくて、多くの障害を持った人だったり、ベビーカーのお母さんだったり、若い頃は渋谷によく通っていたけど、アクセスの問題で一気に通いづらくなった人もいるのでは?そうなると、同じような視点の人ばかりのコミュニティになってしまう。私のような人間がコミュニティの中に入ることで、違う視点や価値観の人に出会いやすい場所をつくりたいと思っています」

来場者から集まった多様な考えを眺める、ロフトワーク林さん。『QWSチャレンジ』のプロジェクト採択員でもあり、SHIBUYA QWSの価値を心から信じるメンバーの一人です。

これからの時代に求められる、大学の価値とは?

次の質問は「どうして大学はQWSと連携するんですか?」
SHIBUYA QWSの大きな特徴の一つは、5大学(東京大学、東京工業大学、慶應義塾大学、早稲田大学、東京都市大学)を始めとした、大学との連携体制です。

これに対して、慶應義塾大学の南澤さんは「この事前説明会に来る前に、そもそもなんで社会は“大学”っていう制度を持っているんだっけ?ということを考えてきたんです」と話し始めました。

「一つの理由として、僕たちが住む社会をより良くアップデートするため、というのがあると思います。もう一つは、未来をつくる人をつくっていく。わかりやすく言えば、研究と、教育ですね」

「ちょっと前までは、未来をつくる人の武器は知識だった。他の人が知らないことを知っている、ということが強さだった。でも今はもう、インターネットで検索すれば知識が出てくる時代。じゃあ現代において、何が未来をつくる力になるんだろう?ということが大学に問われていると思います」

「そんな風に大学の存在価値を考えたときに、もしかすると大学は、キャンパスをつくってその中に閉じこもって生態系をつくって……という状況から変わらないといけないのかもしれない。もっと多様な関係から育む、問題を自分で見つける力や、それを解決する想像力が必要になった時に、今のキャンパスはあまりにも多様性が低い。20歳前後の学生が大多数を占める中で、大学が本来果たすべき機能が実現できていないかもしれない。そんな問題意識から、外の場に大学の機能を展開していくべきなんじゃないか?と思っています」

南澤さんとQWS事務局が企画・実施を行なったトークイベント「クエスチョンカンファレンス|幸せな老後ってなんだろう?」の様子。参加者の年代もスクランブルされた中で、老後の可能性を探る対話が生まれました。

大学について林さんは「QWSは未来の大学になるんじゃないか?と思っている」と言います。

「大学って、高度な学びができる場所。学びたい人って、ほんとうは何歳でもいいんだよね?年齢に関係なく学び、その学びを課題解決に活かしたい人が集まる場所が大学だとしたら、多様な人が集まるQWSで、本来の大学の可能性も追求できるかもしれない」と、渋谷から提案する新しい大学の希望を語る場面も。

また栗栖さんは「私の大学の印象って、常識にとらわれない自由な発想ができる場所なんですね。どうしても社会に出ると、企業の中で色んなあたりまえやルールにとらわれて、“べき論”だったり、目的からの逆算思考に陥りがちだと思います」

「一方で大学には、失敗を恐れずに、常識にとらわれない自由な発想ができる大学生がたくさんいる。凝り固まったビジネスマンのコリをほぐせる大学生が、QWSに来てくれることを楽しみにしています」と、登壇者それぞれが、大学との連携体制に期待を膨らませました。

来場者も交えて、多様なディスカッションが交わされました。

想像したことがないプロジェクトに、出会いたい

3つ目の質問は「どんなプロジェクトに応募してほしいですか?」
登壇者が揃って言うのは、「想像したことがないプロジェクトに出会いたい」でした。

林さんは「想像したことがないって言うと、レベルが高いと思うかもしれないけど、全然そんなことはない。私が知っていることって、世界がこの部屋だと思うと、アリと同じくらい小さいもの。人間一人が知っていることなんて、本当に限られている。そう思うと、ここに集まっているみんなが思うプロジェクトこそが、私が想像したことがない未知の価値を生み出すのかもしれない

ロフトワーク松井さんは「未知の価値のライバルは既知の価値。すでに知られている価値に対して、未知の価値って本当に弱い。これってなんの意味があるの?それっていくら儲かるの?いったい何人に使われるの?そういう既存の社会のものさしに対抗できるのは、自分の感性から生まれた自発的な想い。そういう想いを持ったプロジェクトを支援したいと思います」

それに対して南澤さんは「とはいえ、好奇心に基づく在庫を増やしてもしょうがない。5年後でもいいし10年後でもいいし、はたまた100年後でもいいから、その未来で、誰がどういう風に幸せになっているのか?という姿は描いてほしい。突拍子も無い発想でいいから、例えそれが1000年後だとしても、誰をどう幸せにするのかのストーリーはちゃんと持っていてほしい」と、想像力あふれるプロジェクトの応募を期待すると言います。

QWSでどんな価値が生まれてほしいと思いますか?

最後の質問は「QWSでどんな価値が生まれてほしいですか?」
当日の現場でも、これからの社会のあり方も含めた多様なディスカッションが交わされましたが……。ここでは割愛させていただきます。

なぜならこの先のQWSの価値をつくるのは、この記事を読んでいるあなたも含めた、SHIBUYA QWSに関わる一人一人だから。ぜひQWSに訪れて、眠らせている想いを「未知の価値」に繋げてみませんか?

『QWSチャレンジ』では、あなたのご応募をお待ちしています!

トークセッションが終わった後も、会場の熱気は冷めやらず……。開業後はこんな風景を日常にしたいと思っています。

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