糖尿病管理を中心としたデジタルヘルスサービスを提供する株式会社ザ・ファージの徳永翔平さん。前身となる「GOOD FOOD GOOD MOOD」プロジェクト時代、2021年からQWSで活動を続けており、現在はコモンズとしても関わってくれています。
この記事は、2024年度中に活躍したQWSプロジェクトへのインタビューをまとめたSHIBUYA QWS Annual Report 2024に掲載された記事です。プロジェクトのあゆみを振り返りながら、ブレイクスルーしたきっかけ、ターニングポイント等について伺っています。
データと食事をつなげるーーきっかけは、生体情報の取得を可能にしたデバイスの登場
德永 翔平(以下、徳永):プロジェクト発足のきっかけは、前職時代に遡ります。当時、生体開発事業に関わっていたのですが、Apple社が『Apple Watch』を発表した時、業界に大きな衝撃が走りました。患者の生体情報を医者や病院が所有していた時代から、一般の人々が、デバイスを身につけることで、日常的に自身の生体情報をとることが可能になったーー。当時の上司とも「これから新しい市場が生まれる」という話をしたのを、今でも覚えています。その時の会話が忘れられず、「本気で新しい市場の開拓にチャレンジしたい」という思いから、独立。その後、ふとしたご縁から、2020年頃にQWSと出会いました。すぐにQWSで出会ったメンバーらと意気投合し、THE PHAGEの前身となる「GOOD FOOD GOOD MOOD」というプロジェクトを発足、活動を開始しました。問いは「私たちはなぜ、食事をするのか?-バイタルデータで紐解く「食事」-」でした。
こうやって振り返ると、5年前も今も、AIやデータなどテクノロジーを用いて「おいしい」を定量的に視える化することで、食事文化の再構築を行うことを目指しています。屋号やメンバーなど変わったところはありますが、本質的にはほとんど変わっていないですね。当時のプロジェクトページをいまだに投資家の説明資料の一部としても使っているぐらいです。
大きな「問い」を掲げ、日々のコミュニケーションを積み上げられたからこそ実現できた数々の共創
德永:プロジェクト初期から一貫して大きな問いを掲げて活動できたこと、QWSというコミュニティに恵まれたことはすごく良かったなと思います。手段を絞るなど、問いを小さくすることはすぐにできても、大きな問いを立てることは、それ以上に難しいので。また、僕はそもそも好奇心が強いタイプなので、いろんな人が集まって、しかもその人たちのユニークな話を聞くことができるというQWSとの相性がそもそも良かったんだと思います(笑)。おかげで、入会以降、ほぼ毎日のようにQWSにいます。
日々のコミュニケーションでいうと、会員同士はもちろんですが、僕はコミュニケーターやコミュニティマネージャーの皆さんともよく話すようにしています。プロトタイプを使用してもらってフィードバックをもらうことはもちろんですが、特にこれといった用事がなくても、定期的にプロジェクトの近況を報告するようにもしています。すると、運営の皆さんが「〇〇という会社さんがこんなことに困っていて……」や「最近新しい会員さんが入ったんです」というように、積極的に情報を共有してくれるんです。おかげで、プロジェクトを法人化する時のサポートをコモンズの方々にしていただいたり、ここで繋いでいただいた出会いがきっかけで、法人・自治体の皆さんとの業務提携をさせていただいたり、弊社はQWSをきっかけに、複数の共創を実現することができました。2025年2月に発表した、福井県との保健医療分野のAI開発とデータ取得プロジェクトへの参画に関する協業連携も、その一つ。共創ってある日突然、すぐに実現できるものではないと思うので、こういった日頃の小さなコミュニケーションの積み重ねが重要だと思います。
また、「問い」を立てるという行為やアプローチもすごく良かったですね。どうしてもスタートアップというのは忙しくて、目の前のことに追われがち。内省の時間の必要性を感じつつも、その時間がないというのが正直なところです。ですが、「QWSカルティベーションプログラム」という、問いと向き合うワークショップに誘っていただき、参加したことで、問いを見つめることや対話の重要性を再認識できました。QWSはたくさんのワークショップやイベントが日々開催されていますが、どれもよく設計されているんですよね。そこでの学びを自社に持ち帰って、メンバーとの意思決定や関係者とのコミュニケーションにも取り入れさせてもらっています。QWS会員の皆さんは無料で参加できるものがほとんどなので、まずはなんでも参加されるといいんじゃないかなと思います。
健康をすべての人へ。食事の価値を最大化させるためのチャレンジ
德永:これからは過去に発表させていただいた各社との業務提携や、自治体との実証実験が本格化していくフェーズ。これまではQWSが主な活動拠点でしたが、今後は多拠点での活動が増えていく予定です。いろんな不安はありますが、新たなチャレンジを楽しみながら、着実に僕らのサービスを浸透させていきたいです。
また、組織としても頼もしいメンバーが増えていき、自社でもできることが増えてきました。医師や大学教授をはじめ医療関係者、学会との連携も密にとっており、今年になってからは自社クリニックも開設。これによって、独自で患者のデータ取得もできるようになりました。生体情報の取得から分析・活用、さらには病気予防の提案まで、一気通貫でできるのが弊社の強み。社名の「ファージ」という言葉には食べる、食べ尽くすという意味があるのですが、その言葉の通り、テクノロジーでデータを食べ尽くしていきたいです。そして、データヘルスや医療DX、AI研究における協創を通じて、国民の健康寿命の延伸と持続可能な社会保障制度への実現に向けて貢献できればと思っています。

德永 翔平
德永 翔平
QWSでの活動PJ名:GOOD FOOD GOOD MOOD
THE PHAGEは、「生体ニーズに基づく提案型社会を構築する」をミッションに掲げ、糖尿病管理を中心としたデジタルヘルスサービスを提供するスタートアップ企業です。AIを活用した血糖予測解析に強みを持ち、個々のライフスタイルに合わせた最適な健康管理ソリューションを展開しています。
この記事は「SHIBUYA QWS Annual Report 2024」に掲載されています。
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