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【イベントレポート】「あなたの老後の友達は、10代の学生?」“未来の高齢化社会”の可能性とは

クエスチョンカンファレンス

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2019年11月に開業予定のSHIBUYA QWS。
本記事では、「未知の問いに出会う」ことを目的とした『クエスチョンカンファレンス|幸せな老後ってなんだろう?』の様子をご紹介します。

クエスチョンカンファレンスとは?

多様なバックグラウンドの登壇者が集い、多様な問いを混ぜ合わせながら未来の可能性を探るトークカンファレンス。素朴な疑問から哲学的な考察まで、まだ答えにならない視点や意識が交差することで、思わぬ可能性が生まれるかもしれない。新しい問いが立ち上がる瞬間をお届けします。

開催概要
日時 :2019年9月9日(月)15:30〜20:00
会場 :SOIL|Shibuya Open Innovation Lab
イベント運営:
【主催】渋谷スクランブルスクエア株式会社
【協力】慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科、株式会社ロフトワーク、Shibuya Open Innovation Lab(SOIL)
【後援】渋谷区

「最新技術×一人の想い」がデザインする、未来創造型の“老後生活”

今回のテーマは、「幸せな老後ってなんだろう?」

“人生100年時代”と叫ばれる現代。今や高齢化問題は他人事では済ませられなくなってきています。あなたは自分自身の理想の老後生活を考えたことはありますか?

本イベントは、二部構成となっており、第一部では、老後生活をアップデートする可能性を秘めた最新技術の体験会が行われました。

第二部のトークセッションでは、行政・医療・ビジネス・テクノロジー・地域コミュニティなど多様なフィールドで活躍する5人の登壇者と、幅広い年齢層の方々と一緒になって、「幸せな老後ってなんだろう?」という[問い]について、それぞれの視点を深掘りながら、ディスカッションが行われました。

『ポジティブエイジング』(http://embodiedmedia.org/
“ポジティブなマインドで老後生活を過ごしてほしい”という思いから、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科身体性メディアプロジェクトのポジティブ・エイジング研究チームは、技術開発・体験のデザインを行っています。今回は“触覚”をテーマとした技術体験を提供していただきました。

『VR旅行』(https://www.ittaki.com/)
“外出の難しいお年寄りに「擬似旅行」を楽しんでほしい”という思いから、東京大学先端技術研究センターの職員・登嶋健太さんは、VR (仮想現実)の技術を使った「擬似旅行」の取り組みを始められました。登嶋さんは『VRが高齢者の心身に与える影響』を研究テーマとして、VR体験がお年寄りの認知機能や運動機能にどのような変化をもたらすかについてデータ収集を行っています。イベントでは、実際に研究で利用されているVRをお持ちいただきました。

第一部では、社会でもまだ商用化されていない、日常では体験できないような最新技術が紹介されました。この体験により参加者は好奇心が刺激され、想像力が掻き立てられた状態で、続く第二部へと参加しました。

「自分の50年後の老後生活はどんな感じだろう?」

モデレーターを務める、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授、南澤孝太さんの[問い]から、第二部のトークイベントは幕を開けました。

「本日、第一部では参加者の方に、様々な最先端技術を体験していただきました。少し先の未来では、こうした技術は介護業務の重要な一端を担っている可能性もあります。そのとき、介護職員の役割ってなんなんだろう?介護の概念が変わってくるかもしれません」

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授 南澤孝太さん

南澤さんの問いかけに対して、介護現場での経験を持つ登嶋健太さんは、「そうですね、これからの介護業界では人手が足りなくなるので、介護ロボットが利用される可能性が出てきます。そうすると、介護職員の仕事の大部分を占めるといってもいい、食事・入浴・排泄と呼ばれる三大介助に、隙間時間が生まれてくる。僕はその隙間時間に、介護世界で疎かにされがちなアートやテクノロジーを使ったアクティビティを提案していきたいと思います。なかなか一筋縄ではいかないけれど」と言います。

東京大学先端技術研究センター 登嶋健太さん

南澤さんは「確かに“介護ロボットにしかできないこと、人にしかできないこと”があると思うから、まだまだテクノロジーだけに頼ることはできない。だから、登嶋さんの目指しているアクティビティのような、ポジティブエイジングのフェーズに、介護職員が携われるといいなと思います」と、人とテクノロジーにできる価値提供の差別化を示唆しました。

「あなたの幸せな老後は...…?」

年金でたくさん旅行をしたい……
孫と賑やかな環境で暮らしたい……
定年まで頑張ったからだらだらと過ごしたい……
介護施設でのんびりと生活がしたい……
生涯現役!元気はつらつなおばあちゃん、おじいちゃんになりたい……

会場では「幸せな老後」について考えてみたい[問い]を、参加者各々の観点から書いてもらいました。その後、多様な年齢層が入り混じり合ったグループにわかれて[問い]をシェアし、それぞれの視点を深ぼるディスカッションを行いました。

「高齢者になってからどうやって友達を作ればいい?」

休憩を挟んだあと、本日の登壇者でもある株式会社メディヴァ代表取締役 大石佳能子さんのこの[問い]から、トークイベントが再開されました。

「今現在、世界でも日本は特に高齢者の社会参加が少ない国だと言われ、実際に独居老人の数も年々増加の一途を辿っています」

「ドイツでは認知症で亡くなった人の解剖研究により、社会参加していなかった人は、社会参加していた人に比べて死亡率が高かったということがわかっています。だから、怖いのは独居ではなく、一緒に誰かとご飯を食べたりなど、人と関わらなくなってしまうことなんです。この社会参加の少ない日本でどうやって高齢になってから友達を作ればいいんだろうと感じました」と大石さんは言います。

株式会社メディヴァ代表取締役 大石佳能子さん

南澤さんは、渋谷区の副区長を務める、澤田伸さんに話を持ちかけました。「渋谷区では高齢者の方のコミュニティを作るというところでは、どんな取り組みをされているのでしょうか?」

「まさに今、渋谷区で 『シブカツ!』というプロジェクトに取り組み始めたところです」と、高齢の方がもう一度キャンパスライフを送れるように、という想いを込めたプロジェクトについて意気揚々と語ります。

「シニアはシニアと仲良くするべきだと誰が決めたのだろうか。積極的に若い人とコミュニケーションの場を作ることに意味があると思うから、この 『シブカツ!』という事業を立ち上げました」

渋谷区副区長 澤田伸さん

「年齢に左右されることないですよ。そもそも老後の意味を調べてみてください。老いた後と出てきました。自分が老いたと思っていなければ、老いてないんですよ。“老後”みたいな区別がない社会にしたい」と語る澤田さん。

「渋谷も、年齢に左右されず、遊び心を持っている人が集まる街にしたいですね」と南澤さん。

それに対して澤田さんは、「そうですね。実は先日エストニアに行って、年齢の多様性が教育現場で生まれている学校を拝見してきました。公立の小中高の生徒は皆、同じキャンパスで学ぶんです。高校3年生がいる横で、お子ちゃまがカードゲームをしている風景が見られるんですよ」と感激した様子で語り、話を続けます。

「それに比べて、日本の大学ほど、多様性のないセグメントはないですよ。日本でもエストニアのような多様なカルチャーが混在する環境を教育現場で実践していければいいのにね。その点で、慶應はどう?」
と澤田さんは南澤さんへと意見を求めました。

南澤さんは「そういった面では、慶應は特殊ですね。60歳で定年退職をされた方が新たに会社を作るために修士を取りに来たりしています。老若男女、障害者、健常者が関係なく交わりあって、主体性を持って何かを一緒に作り出す環境を作れたらいいですよね!」と教育現場に携わる立場で、一意見を述べられました。

会場の参加者も、下は高校生から上は90代までの幅広い年齢層の人で構成されており、トークセッションの進行に伴い、会場全体が段々と、一体感のある空気に包まれました。

質疑応答の時間では、参加者からこんな力強い[問い]をもらう場面も。

「社会から支えられるシニアではなく、社会を支えるシニアに展開するには?」

「私は85歳になります。シニア代表で話させていただきます。今までの話し合いで、世代間交流や最新鋭の技術の適用など、多様な解が見られました。しかしこれらを本当に形にしていかないと、私たちはただのコストばかりかかるシニアになってしまう。私たちシニアも含めた情報のネットワークを作り、ジュニアと混じって、社会を支える側になるためにはどうしたらいいですかね?」と参加者の方は熱く思いを語ります。

参加者の質問に対して、二子玉川のカフェ『楽ちん堂』( https://www.rakuchindo.net)という人と人との新しい関係作りを発信している森田清子さんが、経験談を共有されました。「私は、親がいない、障害を抱えているなど、助けの必要な子供達と、地域の人が衣食住を共にする環境を作りました。そのような年齢幅の広い環境にいる私は、iPhoneの使い方などを子供達が教えてくれるので、ソーシャルネットワークの使い方は他の高齢の方より、できると思います(笑)。このような情報との触れ合い方もあると思います」

カフェ『楽ちん堂』森田 清子さん

『楽ちん堂』ホームページから引用

南澤さんは「現代における課題解決では、時代の変化で生まれてきた科学技術をどのようにうまく取り入れていくか、というところが重要になってきますね」と言います。

介護職員の経験もある登嶋さんは「デイサービスではなく、“デジサービス” みたいな、全ての人が平等に情報を受けることも、発信することもできるプラットフォームがあればかっこいいかもしれませんね。その中で一人一人が主体的に情報に触れられればいいですね」とアイデアを共有されました。

続いて次の[問い]に移りました。

「老後も自分らしく生きられる環境で過ごすには?」

「私はシェアハウスみたいな感覚で過ごせる介護施設に住みたいと思っています。そのような環境に40~50代くらいから住んで、自分のペースで友達と一緒に老後生活を楽しめる。そんな環境を作るにはどうすればいいんでしょうか?」と参加者が[問い]を投げかけました。

その問いに触発されて、医療・介護現場のコンサルタントを務める大石さんは、会場全体にまた新たな[問い]を投げかけます。

「シニア向けのシェアハウス、とても良いと思います。では、なぜそのような介護施設は現在普及していないのでしょうか?」

「一つには、介護というのは医療・福祉の延長上にあるので実現が難しい。もう一つには、ニーズはあるけど経済的に失敗するリスクがあって着手できないなど、現状ではいくつかの課題があります。これをブレイクスルーしていくには、シニアだけでなく、ジュニアの人の声も集まることが必要なんです

「今ではコーポラティブハウスと呼ばれる、入居希望の数世帯が集まって建築家とともに共同で作る集合住宅といった、新しい形態の家もあります。一つ実証されれば日本ではどんどん広がると思います。いろんな人から主体的な声が集まることが大切ですね」と大石さんは言います。

登嶋さんは重ねて「そういう意味では、『シブカツ!』のプロジェクトがある渋谷では、“年齢のスクランブル”が実現していくので、何か面白そうなものが生み出されそうで、楽しみです」とコメントしました。

「『シブカツ!』もシェアリングエコノミーという発想から生まれました」と澤田さんも共感の言葉を加えます。

シェアというのは、場所だけでなく、その人のスキルや経験もシェアするということ。社会全体をシェアの発想に変えていければ、日本の未来は明るいと思いますね

休憩時間、カフェ『楽ちん堂』から提供されたケータリングを囲んで交流する参加者の様子

今回のイベントは、「幸せな老後ってなんだろう?」という[問い]に対して、参加者一人一人が当事者となって、考え、対話し、それぞれの[問い]を磨き合いました。
また当日の会場には、普段は見られないような、様々なバッググラウンドを持つ幅広い年齢層の人々が集まっていました。この集合写真に見られるような“年齢のスクランブル”な環境を、日本の至る所に作っていきたいですね。まずは渋谷から、、、!

「幸せな老後ってなんだろう?」あなたも考えてみませんか?

SHIBUYA SCRAMBLE SERIESについて

本イベントは、SHIBUYA QWS開業前にプログラムのエッセンスが体感できる「SHIBUYA SCRAMBLE SERIES」の一環として企画されました。QWSがキーワードにしている[問い]と[スクランブル]を活用し、多様な分野の講義やトークセッション、パフォーマンス、体験型展示など、領域を横断した新しい学びや出会いの場を提供していきます。

過去のイベント一覧

Writer – 稲葉仁美